(『国家の気概』第2章「リーダーに求められること」より一部抜粋・編集。2008年11月1日収録)

中国と台湾の問題は、二十一世紀前半における非常に大きな問題です。

もし、台湾が、中国の武力侵攻を受けて、中国に支配されるようなことになると、アジアに非常に大きな覇権国家が現れることになります。

二〇二五年ごろには、中国の人口は十六億人になるとも言われています。人口十六億人ぐらいの巨大な覇権国家が登場することは脅威です。

もし台湾が中国に押さえられたら、東南アジアの各国は、中国に対して“降伏状態”になり、隷属関係に置かれるようになるでしょう。そして、「日本はどうするのか」という踏み絵が必ずやってきます。

さらに、アメリカのオバマ大統領は、潜在意識では、「大国である中国と結びついたほうがよいだろう」と考えているようです。もし、アメリカで「日米関係以上に米中関係が大事である」ということが言われ始めたり、突如、米中の軍事同盟が結ばれたりしたならば、日本は非常に危険な状態に置かれることになります。

このようなことは、二十一世紀前半に起きる可能性があるので、私は、台湾や沖縄の問題等は非常に重視して見ています。そして、そういう事態が起きないように、今後も提言などをしていくつもりです。

台湾が今の状態を維持できるようなら、沖縄が攻撃を受けることはありえないと思います。ただ、台湾が落とされるようなことがあれば、沖縄も危険です。

中国の中華思想によれば、「尖閣諸島も沖縄も中国の一部だ」ということになってしまうので、中国は、取れるものはみな取っていこうとするでしょう。

実際、中国は、チベットや内モンゴル、新疆ウイグルなどを取っています。こうした所に、全部、独立されたら、国家の体制が揺らぎ始めるので、返すに返せず、とにかく攻撃的な姿勢をとっているわけです。

日本には、「この中国と、どうやって付き合っていくか」という問題があります。

私は宗教家なので、中国については思想の面から入っていきたいと考えています。「日本の繁栄・発展の理由は、この啓蒙思想にあり」ということを伝え、中国本土にも幸福の科学の仲間をつくっていきたいのです。そして、幸福の科学のネットワークでもって、日本や台湾、中国の人々が互いに助け合えるような未来を構築したいと思っています。

自虐史観は他国に日本侵略の口実を与えかねない

「大国だから正義である」というわけではありません。「何が正しいか。何が間違っているか」ということは、やはり、きちんとしていかなければなりません。

「善悪を分ける知力」「善悪を知る智慧」を持つことは、リーダーにとって非常に大事です。「何が善で、何が悪か」ということが分からないと、人を導くことはできないのです。

また、この「善悪を分ける智慧」を持つと、政治や国際情勢、未来を見る目も変わってきます。「善悪をどう見るか」ということによって、未来は違って見えてくるのです。

以前、日本罪悪史観や暗黒史観を持っているような日本人作家が、ノーベル文学賞を受賞しました。そういう歴史観を持っていても、未来が本当に幸福になるのなら、かまわないでしょう。

しかし、近隣諸国には、「日本は悪い国だ」と、国家主導で国民を洗脳している国もあります。そのため、自虐史観をあまり強く持ちすぎていると、そういう国に、日本侵略の口実を与えることにもなりかねないのです。

日本が侵略国家になるのはよくないことですが、独立国家として独自の文化・文明をきっちりと守ることはよいことです。

日本であれ、中国であれ、その他の国であれ、まず、足ることを知って、自国の内政をきちんと行い、国内をしっかり治めることが大事なのです。

話し合い路線での台湾吸収はない

今の流れから見ると、中国経済のバブル的な発展は、最近の金融危機や不況などの影響を受け、おそらく、いったんは崩壊過程に入るでしょう。中国では、今後、しばらく不況が続くはずなので、軍事的ではなく政治的なかたちでの「中台併合」はないだろうと、私は見ています。

中国が台湾に見せたかったのは、中国本土の繁栄、特に中国南部の繁栄です。「中国に編入されても繁栄を続けることができる」ということを示して、台湾を何とか懐柔し、「一国に統一しよう」と考えていたはずです。

しかし、中国では、おそらくバブルが崩壊するはずです。中国経済が急に崩れていくのを台湾が見れば、政治的な話し合い路線で台湾を吸収することはできないでしょう。

また、台湾は三十万人からなる軍事力を持っているので、アメリカとの絆さえ断たれなければ、防衛は十分に可能な状況にあります。私は台湾の繁栄が消されないことを祈っています。

ただ、中国本土が先進諸国と同じような“よい国”になれば、中国本土と台湾が統一されてもかまわないと思います。

中国や台湾問題については、見解をはっきりしておかないといけません。単に「戦争反対」「日本は悪かった」と言うだけでは、沖縄の今後の発展・繁栄は守れないのです。この辺りについては、毅然とした論理を持っていなければいけないと思います。

台湾問題は日本の問題でもある

特に述べておきたいのは、「台湾問題は日本の問題でもある」ということです。

中国の潜水艦がよく出入りしているのは東シナ海ですが、この海は遠浅なので、浮き上がって海上を航行する状況がよく出てきます。そのため、潜水艦は必ず発見されてしまうのです。

ところが、台湾の東側の海域は世界でいちばん深い海です。台湾が中国の軍事基地になり、中国の潜水艦隊がこの海域を支配した場合、西南アジアから石油を運ぶタンカーや、東南アジアと行き来する貿易船の航行ルートが、中国の制海権の下に置かれることになります。

そうすると、有事には、日本の船は、中国の潜水艦を避けるために、フィリピンの東側を回り、オーストラリアのほうを経由しなければいけなくなるのです。

要するに、現在のシーレーン(海上交通路)が確保できなくなるので、台湾問題は非常に重要なのです。

もし、台湾が攻撃され、そのとき、アメリカに台湾を守る意志がなかった場合には、日本は大変な危機に陥ることになります。

政治家は、こういう事態もありうることを選択肢として想定し、「そのとき、どうするのか」ということを考えておかなければいけません。

国家の気概 -日本の繁栄を守るために
大川隆法著
幸福の科学出版刊
1,680円(税込)

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