南シナ海のスカボロー礁周辺海域をめぐるフィリピンと中国の艦船の対立が、サイバー攻撃の応酬に発展した。25日付産経新聞や複数のニュースサイトが報じている。

同海域ではフィリピンと中国の艦船が互いの動向を監視して対峙しており、24日ですでに2週間になる。22日、フィリピン大統領府傘下の3つのウェブサイトが不正なデータを送られ使用不能にされるサイバー攻撃を受けた。フィリピン側は発信源が中国のネットワークに割り当てられたIPアドレスだったと指摘。20日にも国立フィリピン大学のサイトが「われわれは中国からきた!黄岩島(スカボロー礁を指す中国側の名称)はわれわれのものだ!」などと書き込まれた。フィリピン側も中国政府のサイト2つに対し「中国政府は悪質だ。スカボロー礁はわれわれのものだ」と書き込んだという。

サイバー攻撃に関しては4月2日付ニューヨークタイムズが、FBIミュラー長官の「外国、とりわけ中国のハッカーがアメリカ企業のコンピュータに侵入し、貴重なデータや知的財産を大量に盗んでいる。サイバー攻撃は間もなくテロにとって代わり、FBIの最大関心事になるだろう」という発言を伝え、米で関心が高まっている。米の民間専門機関が政府の公聴会で示した3月付の資料によれば、米国の組織が中国などからのサイバー侵入に気づくには平均400日以上もかかるという。

日本は、国外からのサイバー攻撃への備えはどうか。外交評論家・岡崎久彦氏の岡崎研究所のネット上コラムにはこの問題に関し、「日本では現在、意図的あるいは過失による機密漏洩への対処を念頭に置いて機密保全法が議論されていますが、情報窃取のためのサイバー攻撃は、やられているか否かも分からない話なので、対象外になっています」とある。

日本もサイバー攻撃に本気で対処しなければ、いつの間にかどこかの国によって重要情報を大量に抜き取られかねない。リアルに加えてサイバー領域における「国防」意識と能力の向上も急務である。(徳)

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