「今は原発に距離を置こうというのが全国民の認識だ。しっかりと関電に伝えたい」。19日、集まった報道陣の前でこう息巻いたのは、関西電力株の約9%を保有する筆頭株主である大阪市の橋下徹市長だ。

12日には、関西電力の株主である大阪、京都、神戸各市の担当者と関西電力の岩根茂樹常務ら20人を交えてのエネルギー戦略会議が開かれた。関電側が、管内の原発が再稼働できない場合、今夏の電力受給が不足し、火力発電用の燃料費が4千億円規模で増大する見通しから、「再稼働は必要だ」と訴えた。

それに対して、大阪府市統合本部特別顧問である古賀茂明氏からは、「天下りの実績は?」「個別の役員報酬を開示できない理由は?」などといった、情報開示の部分での質問が相次いだという。

大阪市が予定している株主提案の骨子は、

  • 関電管内の全原発を可能な限り速やかに廃止
  • 発送電分離に向け、送電部門の別会社化
  • 原発の絶対的な安全性確保、使用済み核燃料処理方法の確立
  • 新型火力発電など代替電源の確保
  • 役員、従業員数の削減

など23項目。

京都市は、株主提案に賛同する考えを示しているが、「廃止時期については、生活や経済への影響を考慮し、市民の理解を得るべき」との立場であり、神戸市は、「まずは国に『脱原発依存』の手段や方針を示すよう働きかけるのが先だ」と、株主提案に加わること自体を「検討中」だ。

関電の森詳介会長は、関西経済連合会の会長であるし、関経連内部でも戸惑う声が上がり、他の大株主も、「電力の安定供給を考えれば、株主提案という橋下市長の手法には乗れない」という立場を明らかにしている。

大株主たちが難色を示しているため、橋下市長は、個人株主などに賛同の輪を広げる戦略も検討するとの考えを示している。

変革を期待する「民意の後押し」を受けて市長に就任した橋下氏だが、一部の賛同の意見だけをとらえて「全国民の認識」と言い切るのは、行き過ぎであろう。

自らの人気と、それを持ち上げるマスコミの発信力を利用した「民意」のゴリ押しを続ければ、ポピュリズムや衆愚政に陥る危険性も否定できない。

大阪府・市民は、今の民主党政権がマスコミの後押しを受けて誕生したものであることを思い起こしてみるべきかもしれない。〈宮〉

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