3月14日、全国人民代表大会(以下、全人代)閉幕後の記者会見で、温家宝首相は政治改革を強く主張した。温首相は「文化大革命の誤りと封建的な問題が完全には取り除かれていない」と、政治改革を進められていないことに危機感を募らせている。
中国は中国共産党一党独裁体制であるため、中央政府を客観的な視点で監査する第三機関が存在しない。そのため、政府機関の麻痺や汚職が他の体制よりも起こりやすい。政治改革を進めるのは容易ではない。
また、15日の新華社によると、中国共産党中央委員会が重慶市トップの薄熙来党委書記の任を解き、事実上の更迭人事を決定した。
薄氏については、全人代終了後の記者会見で温首相が厳しく批判しており、今回の更迭人事の背景から、温首相が共産党次期指導部を牽制する動きが伺える。
薄氏と、次期国家主席に就任する習近平国家副主席は、共産党の保守派「太子党」に所属する。
大川隆法・幸福の科学グループ創始者兼総裁による霊言「『世界皇帝を目指す男』習近平の本心に迫る」(幸福実現党発行)では、「尖閣事件をめぐる騒動は温家宝首相を失脚させるための陰謀」と明かされている。ここからも、共産党次期指導部の発足に向けた派閥闘争の様子が伺える。習近平の政権掌握に向けた基盤づくりは、まだ固まりきっていないようだ。
また、中国のある官製メディアが行った意識調査では、63%が欧米式の民主主義を求めていたという。中国官製メディアがこの結果を報じたことも異例だが、中国国民の半数以上が欧米式の民主主義を求めているなら、中国国内でも民主化のうねりが本格化するかもしれない。
中国の政治改革と派閥闘争は密接に関連している。全人代終了後の記者会見で、温首相は政治改革を強く主張したが、果たしてその政治改革とは、中国共産党内の派閥闘争なのか、それとも、中国国民の半数が望む欧米式民主主義の実現なのか。
本当に中国が政治改革を行うのなら、「最大多数の最大幸福」を実現する方向で行うべきだ。(飯)
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