「Tigress Tycoons」(メス虎の大立者たち)とは、米誌ニューズウィーク3月12日号のカバーストーリー。中国系アメリカ人でベストセラー『タイガー・マザー』の著者、エイミー・チュア女史による、中国で大成功している女性企業家4人へのインタビューだ。2回に分けて紹介しコメントしてみる。
4人は全員が一定年月、欧米に在住し、西洋的価値観に触れた点が共通している。最初の2人は大手不動産会社の経営者Zhang Xin氏(47歳)と、テレビキャスター出身のメディア業経営者Yang Lan氏(43歳)。
(以下、抜粋)
Zhang Xin氏が生まれた翌年、文化大革命が始まった。幼い彼女は家族と地方に下り、14歳で母と香港に移った。
「母は私を猛烈に勉強させました。あの世代は他に愛情表現の仕方を知らないんです。中国全体で幸せな人は誰もいなかったと思う。当時の中国人の写真で笑顔のものは一枚もありません」
奨学金でケンブリッジ大を卒業後、ウォール街で働き、現在に至る。自分と重ねる人物はスティーブ・ジョブズ。
「中国にジョブズが出ないのは学校教育のせい。生徒たちに考えることを十分教えていません」
大成功と富を得た彼女と夫は心の空しさを覚え、05年にバハイ教(19世紀ペルシャ発祥の宗教)に入信した。道徳的空白(moral vacuum)が中国を覆っている現在、無理もない。
Yang Lan氏の大成功のきっかけは、地方の女性向けテレビ番組トークショーを始めたこと。自身も母親である彼女は、中国の一人っ子政策が過度の教育熱に結びついていることを憂えて言う。
「子供のテストの点が自分の値打ちだと思っている母親が多くて残念です。彼女たちはハーバードなどの限られた大学名しか頭になく、そこで何を教えているのか知りません」
(抜粋、以上)
「中国のmoral vacuum」とは、最近しばしば欧米メディアで目にする表現だ。富や伴侶や高学歴を得ても、それだけで人の心は満たされない。長年の唯物論一党独裁のもと、中国の人々は「目に見えない価値」に飢えている。(司。後編に続く)
【関連記事】
2011年6月16日付本欄 ハーバードのサンデル教授が中国でも人気の理由