イスラエルのネタニヤフ首相は5日、ホワイトハウスでオバマ米大統領と会談し、イランの核問題について協議した。

ネタニヤフ首相はイラン核施設への攻撃はまだ決定していないとしながら、イスラエルは自衛の権利を持つとし、将来の軍事行動の可能性に含みを持たせた。一方のオバマ大統領は、外交手段でイランを交渉に引き出す余地はまだ残っているとして、イスラエルに単独行動について自制を求めた。

会談でオバマ氏は、制裁を重視する従来のスタンスを崩さなかったが、ここ数日の間にアメリカがイスラエルに歩み寄りを見せているのも事実だ。オバマ大統領はイスラエル系ロビー団体の会合での演説などで、イランの核武装を阻止するために「いかなる選択肢も排除しない」とし、場合によっては軍事手段も取りうると示唆している。

しかし、今回の会談で双方とも、どの段階で軍事手段に踏み込むのかの「レッド・ライン」は明確にしようとしなかった。アメリカ側としては、イスラエルとひとまず歩調を合わせることで、イランに対してより強硬なメッセージを送ったことになる。7月にはEUの石油禁輸制裁も発動することから、イラン側の反応を当面は見ることになるのだろう。

アメリカは先月末に、即席に近い形で北朝鮮との合意をまとめている。北朝鮮とイランの問題を天秤にかけつつも、中東の緊張が高まる中で、当面はイランへの対応に優先度を与えたという見方もできるだろう。しかし、権力移行に伴う北朝鮮の不安定化は、常に懸念されるべきリスクであり、アメリカは東アジアからも目を離すわけにはいかない。

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