米誌タイム3月5日号は、ロシアの記事とイランの記事を載せている。別々の記者によるものだが、そこに描かれた二つの国情に、ある種の類似性が読み取れる。

ロシアの記事は、プーチン氏が大統領選の選挙運動の一環として、首都モスクワから約1700キロ離れた都市クルガンを訪れたときのレポート。

  • 歓迎会を仕切ったクルガンの工場長は、プーチンに訴えた。「うちの子たちが学校に行っているここ12年間、学校の窓や屋根の修理は親たちがポケットマネーを出し合ってるんです」。プーチンは顔をしかめて答えた。「分かりました。今日、知事に言っておきます」。
  • 男性は言う。「プーチンは大統領とか首相とか呼ばれているけど、我々にとってはツアー(帝政ロシア時代の皇帝)なんだよ。昔の農民がツアーに直訴したのと同じように、こうやって直接会える機会に直訴するわけさ。昔とたいして変わっちゃいない」

イランの記事は、アフマディネジャド大統領(以下ア氏)が最高指導者ハメネイ師との対立を深めるなかで、人気取りのバラマキに出ていることを伝えている。

  • ア氏政権は2010年、燃料業界や食料業界に対する補助金を削減し、それによって浮かせた財源で、国民に対する直接の現金給付を始めた。金額はざっと国民1人につき月20ドル(約1600円)で、首都テヘランの住民にとっては大した額ではないが、地方の貧しい人々は喜んでいる。
  • パリ在住のイラン専門家は言う。「イラン社会でもっとも貧しい階層の人々はこの給付金に頼っており、ア氏に恩を感じている。彼らは次の選挙でア氏に投票するだろう」

プーチン氏もアフマディネジャド氏も、国際社会では決していいイメージの指導者ではないが、国民にしてみれば現金給付などの直接的恩恵を与えてくれることで、いい指導者に見えるのだろう。決して他国のことではなく、「○○手当」などの利益で国民の歓心を買おうとする政治家に対しては、その魂胆を冷静に見抜きたいものだ。(司)

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