CMを使った激しいネガティブ・キャンペーン合戦となったフロリダ州での予備選挙は、資金力で勝るロムニー前マサチューセッツ州知事が圧勝を収めた。選挙戦はロムニー氏とギングリッチ元下院議長の一騎打ちになりつつあるが、ここで演説から両候補の特徴を分析してみたい。
トップを走るロムニー氏はフロリダの勝利演説で「オバマ大統領は経済のほとんどすべての分野を悪く言いますが、私はアメリカを起業家やイノベーター、雇用を生み出す人たちにとって、最も魅力的な場所にします」などと語り、オバマ氏への対抗心を露わにした。経済に強い候補とされるロムニー氏だが、それは元経営者としての彼の経歴に負うものが多く、勝利演説でも具体的な政策にはあまり踏みこんでいない。
2月1日付の米ウォールストリート・ジャーナル紙社説は「もしロムニー氏が党をまとめ、新たなアメリカの多数派を形成したいと本気で思っているなら、経営者の経歴以上の大義名分が必要である」と論じている。自身の経歴をベースに支持を訴えるのは2008年にオバマ氏も使った手法だが、ロムニー候補には今後、魅力的な政策を打ち出して熱心な支持者をつくることが求められる。
対するギングリッチ氏はフロリダ予備選後の演説で「レーガン保守とマサチューセッツの穏健派との選択になります」と呼びかけ、保守としての立場を明確にしている。同氏は所得15%、法人12.5%のフラット・タックスを打ち出しているが、日本との関連で注目されるのは中国との付き合い方である。
オバマ氏が延期しているカナダとのパイプライン計画を実現させると宣言した同氏は、「カナダ人へのメッセージは、中国と取引するなということです」と話した。カナダがアメリカの代わりに中国に石油を輸出する可能性があるとされるからだ。ギングリッチ氏はサウスカロライナ州での勝利演説でも、アメリカの国債問題で中国の影響を問題視する発言をしており、拡大する中国の影響力について一定の問題意識を持っていることがうかがえる。
まだトップのロムニー氏も公認に必要な代理人数の1割も獲得しておらず、共和党の公認争いはまだ向こう数カ月続く。オバマ氏が格差問題を取り上げる中、共和党候補には、アメリカをいかに復活させるのか、さらに熱の入った政策議論を期待したい。
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