南シナ海での中国の海軍活動が海の航行の自由を脅かしかねないという懸念が、昨年来特に高まっており、アメリカや周辺国の対応が急がれている。この問題について、新アメリカ安全保障センター(CNAS)は「優位な立場からの協調」という政策提言レポートを発表したが、アメリカの政策を読む上で助けになるので紹介したい。
- 今後数十年にわたり、中国などから航行の自由を守るのがアメリカの重要な課題になる。
- 外交や経済による関与には軍事力の裏付けが必要であり、アメリカは経済成長と両立しうる程度に海軍のプレゼンスを高める必要がある。
- (アメリカとの2国間だけでなく)東アジア周辺国間の安全保障のネットワークを築かなければならない。東南アジア諸国とのパートナーシップ樹立は、長期的な政策目標とすべきだ。
- 南シナ海の平和と安全保障を、外交・安保政策の優先課題とすべきである。特に、航行の自由を確保するための多国間の機関を設立するべきだ。
- アメリカとの2国間だけでなく、地域内の経済統合を進めるべきである。
- 強い軍事力と経済力を背景にして、中国との関与を進めるべきである。アメリカの力を強め、ルールに則った外交を行うべきであり、軍事衝突は避けても外交対立を忌避するべきではない。
外交のアジア重視を打ち出しながらも、財政の厳しさを思えば、アメリカは今後地域の関係国とのネットワーク強化により力を入れるものと思われる。TPPもその一環である。野田政権は「東アジア海洋フォーラム」の創設を昨秋提案しているが、中国の軍拡に懸念を持つ関係国との協力強化に、日本は今後も積極的に取り組むべきである。集団的自衛権の解釈変更も、日本がイニシアチブを発揮する上でいっそう避けて通れない課題になるだろう。
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2011年12月4日付本欄 アメリカが南シナ海にこだわる理由 南シナ海に遊弋する中国原潜の脅威