昨年の日本の年間出生数は105万7千人で、過去最低を更新。すでに「第3次ベビーブーム」も峠を越え、激減への急坂を転げ始めたと、16日付産経新聞が論じている。

出生数は2006~2008年は109万人前後に盛り返したが、ここが「第3次ベビーブーム」の山だったと見られ、その後は減り続けている。このままいくと、出生数は2055年で45万7千人、2105年には23万7千人まで減ると予測されている。

原因は、結婚しない男女の増加、結婚しても晩婚化で女性の出産適齢期を過ぎるケースが多いこと、結婚した夫婦が産む子供の平均人数も2人を割ったことなどが挙げられる。

さらに深刻なこととして、18~34歳の未婚男性の61%が「彼女がいない」と答えていて、その半数近くが交際を望んでいない、つまり結婚する意志がないことだ。

これらの統計を見て、いくつか分析してみたい。

まず、こういった統計で決定的に欠けている点が一つある。それは「人工中絶の数」だ。昨年あたりでも年間33万件はあるといわれているし、闇で行われている件数を足せば100万件近いともいわれる。とすれば、出生数と同じくらい堕胎が行われていることになる。

刑法では堕胎は犯罪と定めている。しかし母体保護法を拡大解釈して「合法的」に行われている。もちろん中にはやむを得ぬケースもあるが、ほとんどは「親の都合」だという。

霊的観点からいえば、妊娠9週目頃には胎児に「魂」が宿る。それ以降の堕胎は「殺人」と同じであり、堕胎手術を受けた胎児の魂は、恐怖と悲しみであの世への旅立ちができずに「賽の河原」で迷っているケースが多い。親への恨みから障りを起こすケースもある。

このような霊的観点を知らず、刑法で犯罪に当たることも知らない親が、経済的理由や自分の都合によって堕胎を繰り返しているのなら、「少子化」以前の問題である。学校教育において宗教教育がないばかりか倫理道徳についても教えないことが、自分勝手な親をつくりだしているといえる。

だが、政府の政策ミスはもっと大きい。「少子高齢化が来る」とずっと前から予見されていたにもかかわらず、無策に尽きた。ここに来て野田首相が「世代間の支え合い」などと言って、社会保障財源を全世代に負担させる増税をしようとしている。こんなことをすれば日本の経済は悪化の一途をたどり、若者も未来を悲観してさらに子供を産みたくなくなる。

やるべきことは、霊的人生観の普及と「家族の大切さ」の復権、養子や里親制度の充実、住環境の整備、保育所待機児童の解消など、「産む環境の整備」だ。そしてさらに、「日本の未来は明るい」という未来ビジョンの提示、社会保障の民間委託、移民など人口増政策といった、数十年先を見据えた政策である。目先の増税しか頭にない野田首相および民主党政権は、早々に崩壊させねばならない。(仁)

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