中国の四川省アバ・チベット族チャン族自治州アバ県で、チベット族の男性と僧侶が6日に焼身自殺を図った。米政府系のラジオ自由アジアなどの報道に基づいて、各紙が伝えている。
8日付日本経済新聞によれば、僧侶のほうは死亡したとみられ、昨年3月以降、同県とその周辺で中国政府に抗議して焼身自殺を図るチベット族が相次ぎ、今回で14人となったという。今年になってからは、今回が初めてだ。
チベットは元々独立した国だったが、1950年に中国の人民解放軍が英米からチベットを解放するという名目で武力侵攻を行い、その後中国の自治州として組み込まれた。
チベット侵攻の時には、7000あったという仏教寺院の9割が破壊され、僧侶の9割が死亡、還俗、国外逃亡となったと言われる。1984年までに120万人以上のチベット人が虐殺されたという。
中国政府によるチベット弾圧はその後も繰り返されており、チベット人によるデモ行進や抗議活動が続いている。
中国の軍拡が、近隣諸国に脅威を与えているのは、チベットをはじめ、自治区に組み込まれた地域で、今なお圧政が敷かれているためだ。
チベット僧侶の焼身自殺は、昨今、あまりに頻繁に起きるため、各紙の報道は、ほんの数行の「ベタ記事」扱いでしかない。しかし、「信教の自由」があるか否かは、中国を考える上で最重要の論点である。本欄としては、ウィグルや内モンゴル情勢も含めて、注意深く経過をウォッチしたい。(村)
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