厚生労働省が、2013年度から希望者全員を65歳まで再雇用するよう企業に義務づける方針を出し、経団連など経済界から反発を浴びている。厚労省が65歳までの再雇用を急いでいるのは、年金の支給開始年齢を65歳に段階的に引き上げようとしているからだ。

すでに2006年、厚労省は企業に(1)定年年齢の引き上げ、(2)継続雇用制度の導入、(3)定年制廃止のいずれかを義務付けた。しかし、希望通り65歳まで働ける企業は、今年6月時点で全体の47.9%。大企業は23.8%に過ぎない。その要因は(2)の継続雇用制度のあいまいな基準を各企業で設定し、一部の人しか再雇用しないためだ。

そこで厚労省はこの基準を廃止して、希望者全員が65歳まで働けるようにしようとしている。

だが、企業側としては、長期不況の中でリストラなどしてきた中で、高齢者の再雇用にリスクは伴う。「希望者全員」といっても、企業側が残ってほしい人とは限らない。またその一方で、日本の高齢者の「働く意欲」はきわめて高いし、専門技術を持っている人も多い。「年金引き上げとセット」などと見え透いた施策を取ろうとするから世論の反発を食うのだ。

ここは政治家が大胆に雇用拡大の施策を打って、「安心して働ける社会」をつくるべきだ。TPPをチャンスとして、農業への新規参入自由化、漁業の企業化、植物工場や魚工場など未来型産業へと変えることもできる。リニア建設や東京の超高層ビル建設など、やろうと思えばいくらでも雇用は生み出せる。

後ろ向きの議論ばかりは、もう飽きた。前向きで希望が湧いてくる話を、もっと政治家もマスコミもすべきだ。(仁)

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2011月11月16日付本欄 高齢者の就労意欲に応えよ

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=3286