来年の米大統領選挙に向けた共和党の公認争いでは、ニュート・ギングリッジ元下院議長がトップを走っている。これまではハーマン・ケイン氏が、フラット・タックスと減税の「999プラン」で支持を集めていたが、セクハラ疑惑が持ち上がったことで急速に支持を失い、3日に事実上の選挙撤退を表明。ケイン氏の支持者が流れたこともあって、ギングリッジ氏は来月からの予備選挙で早い日程にあるアイオワ、サウス・カロライナ、フロリダの各州で優位に立っている。

歴史学博士のギングリッジ氏が巧みなレトリックで人気を集める一方で、共和党の公認争いが消去法になってきた感は否めない。2位につけるミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事は政治信条がブレると保守派から見られており、「ロムニーだけはダメだ(Anyone but Romney)」という声が高まったのが、ギングリッジ氏が首位に立った理由の一つだからだ。8日発表のギャラップの調べでは、来年の選挙に強い関心を持っていると答えた共和党支持者は、9月の時点から9%、昨年11月と比べると14%も低下している。ティー・パーティーの後押しを受けて、昨年の中間選挙で躍進した共和党の熱狂が、段々と下火になってきていることがうかがえる。

対するオバマ大統領は選挙モードを強め、格差問題を利用して支持を広げようとしている。6日にカンザス州で演説を行ったオバマ氏は「一部の人のすさまじい強欲」が金融危機を引き起こしたとの認識を示し、一部の儲け過ぎによって中流階級の生活が圧迫されていると訴えた。「みんなが公平な機会を持ち、公平な分担を果たし、同じルールの下にあるとき、この国は成功する」と述べ、富裕層への課税強化などを訴えたこのスピーチを基に、オバマ陣営は「みんなに公平な機会を(Giving Everyone a Fair Shot)」というタイトルの特設サイトを開くなどして支持を訴えている。

共和党候補の勢いが徐々に衰えるにつれて、現職再選がじわり現実味を帯びてきている。本誌はオバマ大統領就任前からその社会主義的な思想に警鐘を鳴らしてきたが、富裕層に責任転嫁して自らの経済政策の失敗から逃れようとする選挙戦術は、再選後のアメリカ経済の行方を案じさせるものだ。

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