欧州連合(EU)首脳会議は9日、ユーロ圏各国の財政規律強化で合意した。

この財政規律強化は、ドイツとフランスの首脳が強く望んだもの。基準以上の赤字となった国は自動的に制裁が発動される。

しかし、財政規律の強化や緊縮財政では、自分の首を絞めるだけで、EUはさらに深刻な経済危機に見舞われてしまうだろう。

日本のバブル崩壊後の不良債権処理などの経験を踏まえ、野村総合研究所のリチャード・クー主席研究員が、欧州やアメリカは積極的に財政支出をすべきだと主張している。

クー氏は12月1日に都内で講演し、その内容を9日付産経新聞が報じた。この中でクー氏は日本はバブル崩壊後、企業が年間30兆円の借金返済を行い、さらに家計部門も年間20兆円の貯金をし、その分GDP(国内総生産)が1割減ってもおかしくなかったと言う。しかし、政府が借金して使ったため、景気の大幅な落ち込みには至らなかったと分析。

「大変な政府債務を抱えたとはいえ、これは世界で最も成功した経済の一つだ。実施しなかったらGDPは大幅に落ち込んだ」と指摘した。

今のユーロ債務危機も同じように企業が借金返済を優先し、家計も貯金している。クー氏は、資金が逃避し、国債金利が上がってギリシャやイタリアなどが借金できない事態を解決するため、「ユーロ圏参加国が自国民にしか国債を売ってはいけないルールを導入すればいい」と提案する。そのうえで財政出動を行うべしと訴えている。

一つのアイデアだとは思うが、ギリシャやイタリアがユーロを導入した大きな理由は、自国通貨ではなく、ユーロで資金調達ができるからだった。「国債を自国民にしか売ってはいけない」とするならば、必ずしもユーロである必要はない。

突き詰めれば、今のユーロ危機を解決するには、ユーロを離脱し、自国通貨に戻るほうが早いということになる。

緊縮財政で「恐慌」に近づくのか、それともユーロを離脱して財政支出をしやすくするのか。その選択のように見える。(織)

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