欧州債務危機が綱渡りの状態だ。
ギリシャは5日、国民投票を回避し、EU(欧州連合)の決めたギリシャ救済のための包括策を受け入れることになった。パパンドレウ首相の信認投票も小差で切り抜け、大混乱は何とか避けられた。
しかし一方で、イタリアがIMF(国際通貨基金)の監視下に入ることになり、欧州危機はギリシャだけでなく、ユーロ圏第3位の経済大国にまで広がった。
イタリアの10年債の利回りは一時6.4%にまで上昇し、信用不安に陥っていたため、イタリアは独仏首相らの説得を受けて、IMFの監視下に入ることになった。
こうした混乱を受けて、5日付朝日新聞では「地球規模の統治を考える時」と題した編集委員の署名記事が載った。
「より大きな困難を乗り越えるため、世界にまたがる統治システムを強化し、危機を封じ込める仕組みを作る時が来ている」という内容だ。
債務危機を抑えるためには、監視と統制をより広く、大きくしないといけないというわけだ。
しかし、この発想では、キリがないだろう。監視と統制は、自由なお金の流れを阻害し、かえって信用を落とす側面もある。経済の発展はリスクの代償として得られる面がある以上、統制型経済は経済を萎縮させ、かえって危機を封じ込める力を弱めてしまう。
そもそも「リスクをあらかじめ予測し、備えておく」という発想自体、一見合理的だが、現実には不可能だ。
人類は、危機はあらかじめ予測できないという謙虚な姿勢から、危機を回避し、分散する仕組みを模索する必要がある。(村)