20日付読売新聞夕刊によれば、福島原発事故の賠償の免責規定を東電に適用しなかったことで東電株を下落させたとして、男性弁護士が国に損害賠償を求める訴訟を起こした。

原告は、原子力損害賠償法は「異常に巨大な天災地変」の場合は電力会社の損害賠償責任を免責するとしており、政府は過去、「(免責の対象は)関東大震災の3倍以上」と説明していたことを挙げ、「東日本大震災の規模は関東大震災の3倍をはるかに上回り、今回の政府の判断は誤り」と主張している。

これに対して国側は、「免責は、人類がいまだかつて経験したことのない、全く想像を絶するような事態に限られるべきだ」と反論、「3倍以上という説明は、分かりやすい例えにすぎない」とし、請求の棄却を求めた。

国が言う「人類がいまだかつて経験したことのない」ような地震や天災地変とは、どのようなものなのか。マグニチュード9.0でも「異常に巨大な天災地変」に当たらないというのであれば、おそらく大陸移動や日本沈没レベルの地震ということになるだろう。

そのような「かつて経験したことのない」地震が来れば、原発どころか、国も沈んでいるだろう。

要は、国は損害賠償の責任を東電に押し付けたいのだ。だが、どう見ても今回の原発事故は巨大な天災地変がなければ起きなかった事故であり、東電に責任を押し付けるのは間違っている。

裁判所が国の責任を問えるかどうか。もし原告敗訴となったとしても、似たような訴訟があちこちで起きる可能性はある。(仁)