英フィナンシャル・タイムズの国際担当コラムニスト、ギデオン・ラックマン氏が「アメリカは“衰退”をマネジメントしないといけない」と電子版(17日付)で書いている。以下はポイント。
- 戦後のイギリス外交の中心的な仕事について「衰退のマネジメント」という言葉を発明したイギリスの元外交官に会った。しかし今のアメリカの外交官や政治家は、同じようなことを言おうとしない。これは恥ずかしいことだ。
- アメリカの相対的な衰退は、戦後のイギリスの没落ほど突然のものではない。アメリカはまだ世界最大の経済大国であり、抜群の軍事力、外交力を持っている。しかし中国が世界一の経済大国になろうとし、この10年の最後にアメリカと逆転するだろう。
- アメリカが中国に経済的優位を譲っても、軍事、外交、文化、技術における優れた力によって、アメリカはしばらく支配的な政治的パワーであり続けるが、中国や他の国の経済的台頭は、アメリカの行動を制約する。
- アメリカの衰退は平和と繁栄の終わりを意味しないが、(財政などの優先順位の)選択と同盟の強化を意味する。とはいえ、それを議論する政治家はほとんどいない。
- アメリカのナンバーワンの地位が動かないと甘く見て、今夏の国債上限引き上げ問題のようなことが起こっている。
- イギリスは、大戦後の新しい覇権国が言語や血縁や政治思想で結びついたアメリカだったのでうまく調整できたが、アメリカは中国に譲ることになるので、覇権の移行はより厳しくなる。
国際政治が専門のイギリス人ジャーナリストだけに、イギリスの戦後の経験を踏まえた「提言」となっている。アメリカの国力は相対的に落ちていく中で、どうそれを押し留めるかは、マネジメント的な考え方が必要だということだ。
本誌としては必ずしも中国にストレートに覇権が移行するとは考えないが、今の時代を象徴する記事だ。(織)