宮城県の村井嘉浩知事が提案していた「水産業復興特区」構想が漁協などの反対にあって後退を余儀なくされた。

県の復興計画案で「検討課題」にとどめ、2013年度以降の導入に先送りした。

村井知事は、東日本大震災で大きな被害を受けた県内の漁業を復興させるために、食品会社や外食チェーンなど民間企業の参入を認め、地元漁業者と合弁会社を設立できるなどの自由化政策を提案していた。

これに対し、宮城県漁協は「先祖代々守ってきた漁場を企業に奪われる」などと反対運動を展開した。その結果、村井知事が水産業復興特区を事実上断念せざるを得なかったわけだが、これで宮城県の漁業の復興はその分遅れることになる。

被災地復興は何よりもスピードが重要だ。元通りかそれ以上の経済活動ができるよう、資金や人材などをできるだけ早く投下しなければならない。その道を「先祖からの漁場を守る」という理由だけで閉ざしてしまうというのは、何とも情けない話だ。

村井知事は震災後3カ月間に政府に対して200件近い要望を出したという。岩手県は15件、福島県は原発事故があったので仕方ないがゼロ件だった。

スピード重視でやってきた宮城県を政府が全面的にバックアップすべきだったが、民主党政権にそれを求めるのは、ないものねだりだろう。(織)