野田首相が誕生したことを受けて、2年前、民主党が政権交代する前に上梓した著作『民主の敵』を読み直してみた。

気になった点は三つ。

一つは、著作の内容を一言で言うと、「反自民」ということ。野田首相は、反自民ということで細川政権を応援していたが、あっけなく政権を放り投げてしまったことについて痛恨の思いを拭えないらしく、「教訓とすべきは、政権というのは簡単に投げ出してはだめだ」と書いている。

まさに、今民主党はこの問題意識の中で、なりふり構わず政権の延命を図っている。

二つ目は、増税について、ほとんど触れていないこと。著作では特別会計にメスを入れることを強く主張しており、「消費税は何%が適切かといった議論は、日本の財政を完全情報公開したうえでの話」と訴えている。「消費税率アップを安易に認めてしまうと、そこで思考停止し、今のからくりの解明はストップしてしまう」とも綴っている。

いわゆる「埋蔵金」問題は、未だに解決したとは言えないはずだが、この2年の間になぜ野田首相が増税論者に転じたのか謎だ。

三つ目は、「政治主導の可能性が、民主党にはある」と述べている点。

これは本欄でも主張したが、6日に野田首相が「事務次官会議」の復活を言った時点で、政治主導を諦めたと言わざるを得ない。

改めて読み直してみると、2年間で主張が大きく変わっていることが読み取れる。

一致しているのは「反自民」という一点だけだ。

すると、すべての判断は、「国益」でも、「国民の幸福」でもなく、「民主党政権の維持」が優先される可能性が高いということだ。

反自民という一点でのみ結束が可能であり、中身はそれしかないという民主党の本質のうつろさに、国民は一刻も早く気づくべきだ。(村)