東日本大震災の被災者に届いていない義援金が950億円にのぼることを、14日付朝日新聞が報じている。

同紙の取材によると、岩手、宮城、福島の3県の沿岸36市町村に寄せられた義援金の総額は2367億5千万円(7月27日~8月12日現在)。このうち、被災者に支給できたのは60%の1417億円で、残りの950億円が滞っていたという。

記事では、配分できていない自治体の次のような声を紹介している。「復興関連の他の施策に忙殺され、支給要件を決める配分委員会もまだ立ち上がっていない」(宮城県岩沼市)、「28日の選挙で選ばれる新町長のもとで決める」(町長が死亡した岩手県大槌町)、「手厚い配分をするために、まだ義援金を蓄えている状態」(宮城県気仙沼市、同女川町)

もちろん、職員の人数が少ない自治体や、職員自身が被災者であることを考えれば同情すべきだろう。だが、「新町長のもとで決める」とか「まだ蓄えている」という理由を聞けば、やはり、「お役所仕事は遅い」という批判を浴びても仕方がない。

3月の本欄でも指摘したが、日本の役所は「差をつけてはいけない」という平等感覚が強いため、実態の把握に時間をかけすぎて、必要なときに必要なサービスを提供できないという問題がある。民間企業やボランティアの人々が現地で機動的に活動している状況と比べれば、それがよく分かる。

最近は、民主党政権が「復興増税」へと動いたり、週刊誌が「震災復興のために、宗教法人に課税しよう」などと主張するが、こうした状況を見るかぎり、いくら増税しても、再び「実態把握に時間がかかる」などとして、結局は、被災者にお金は届かないだろう。

そもそも、政府や日銀が大胆な公共事業への投資や金融緩和などを行い、資金や仕事を循環させて景気を回復させていけば増税する必要などない。つまり、被災者にお金が届かないのも増税の問題も、結局は、役所や政治の仕事のまずさの問題である。(格)