大雨に見舞われた新潟県で、7年前の豪雨被害の教訓を生かした治水事業によって川の氾濫を防ぎ、被害が限定的なものになっていることを31日付朝日新聞が報じている。

記事によると、7年前に新潟県を襲った豪雨では、6河川・11カ所で堤防が決壊し、16人の死者・行方不明者が出た。この直後から国と県は、治水事業に取りかかった。信濃川や刈谷田川などの河川敷部分を削って川幅を広げ、川の水量が増えても対応できるようにし、削って出た土を堤防にのせて高さを1~2メートルほどかさ上げした。この事業は5年がかりで行われ、昨年終わったばかり。

堤防が築かれた信濃川などでは増水はしたものの、堤防近くの住宅に水が流れ込むことを防ぎ、7年前に9人が死亡した三条市では、前回を上回る雨量に見舞われたが、今回の人的被害は死者1人にとどまったという。

一方、菅政権は、東日本大震災の被災地の復興で津波対策について頭を悩ませている。菅首相は、震災直後に海岸沿いの住宅の「高台移転」を高らかに宣言したものの、7月29日に決定した復興基本方針では、「高台移転」に対する財政支援策には触れず、迷走を続けている。

本欄でも何度も指摘してきたが、上の新潟の事例を見ても、三陸沖の津波対策については20メートル以上の高さの堤防をつくるべきだろう。実際に震災のとき、高さ15メートルの水門と防潮堤を備えていた岩手県普代村は、周辺の市町村で数百人単位の犠牲者が出る中、「死者ゼロ、行方不明者1人」という小さな被害にとどまっている。

民主党政権は、「ムダを削る」と言って、八ツ場ダムなど100以上のダム建設を止めたり、スーパー堤防事業をストップさせたりして、自民党政権時代の事業を否定して、国民にアピールしてきた。しかし、「何がムダで、何が必要か」をもっと真剣に考えなくてはいけない。必要な公共事業も、必要なコンクリートも存在することを知る必要がある。(格)