中国空軍の戦闘機が先月29日、台湾との境界となっている中台中間線を越えて、台湾の空域を侵犯していたことがわかった。台湾国防部の話として、米ウォールストリート・ジャーナル紙と、英フィナンシャル・タイムズ紙が報じている。

記事によれば、国際空域を飛んでいたアメリカの偵察機を追い払おうとした2機のSu-27戦闘機が、台湾の空域に侵入した。中国空軍による台湾の「領空侵犯」は、1999年以来のこと。

今回の出来事は、南シナ海での中国海軍の活動に不信感が高まっている中で明らかにされた。アメリカは台湾に対する新たなF-16戦闘機の売却をめぐって中国の反対にあっているが、10月までに下される予定のその決定にも影響を与える可能性も否定できない。

中国の脅威が高まる中、米中両国は軍高官の相互訪問などを通じて軍事レベルでの対話を進めている。しかし、信頼関係を築くのは「長い道のり」と、米軍制服組トップのマレン統合参謀本部議長も認める(米ニューヨーク・タイムズ紙)。

東アジアで起きつつあるのは、軍事バランスの変化にともなう米中の勢力圏の引き直しという地殻変動であり、その境界部分では紛争が発生しやすくなる。

対話によって偶発的な紛争を防ぐのは重要だが、それと同時に、アメリカとその同盟国は、中国の軍拡に対して実際的な防衛力の強化や同盟強化によってバランスを取ることも決して忘れてはならない。