菅首相は13日夕方、記者会見を開き、今後のエネルギー政策について、「原発に依存しない社会を目指すべき」として、明確な「脱原発宣言」を行った。資源の少ない日本が準国産エネルギーの原発を手放すことは、他国に生殺与奪の権を握らせることに等しい。菅首相は経済的、国防的観点からも亡国の選択をした。
会見で、菅首相は、「国民、企業の理解と協力があれば、夏のピーク時の節電や自家発電などで十分対応できる」などと、電力供給を増やすのでなく、国民に我慢を強いることで、電力不足を補うというマイナスの発想を披露した。興味深いのは、同じ趣旨の社説が、同日付の朝日新聞朝刊に掲載されたことである。一面の社説特集で「提言 原発ゼロ社会」と銘打ち、「原子力発電に頼らない社会を早く実現しなければならない」「需給から見て必要なものしか稼働させなければ、原発はすぐ大幅に減る」などと主張している。
また、会見で菅首相は「脱原発」を掲げた解散総選挙を打つ可能性について、「一切考えていない」と否定してみせたが、今回の示し合せたような脱原発宣言は、解散に向けて、首相と朝日がスクラムを組んだと見ていいだろう。実際に、菅首相は「(朝日の社説と)かなり共通しているかもしれない」などと語っている。
左翼政治家と左翼マスコミが仕掛けた脱原発によって、日本は火力発電への依存が強まるが、火力燃料のほとんどは輸入に頼っているのが現状だ。今後、資源輸出国で政変が起こったり、燃料が運ばれてくる海上交通路(シーレーン)での中国海軍の支配権が拡大すれば、日本中の電気が止まる。つまり、今回の「脱原発宣言」は将来的な中国への従属をも意味している。
それにしても、すでに退陣を表明している首相が、国家の命運を左右する政策の大転換を行うということが許されていいのだろうか。(格)