国際政治学者

佐久間 拓真

(ペンネーム)
国際政治の中でも特に米中関係、インド太平洋の安全保障、中国情勢を専門にし、この分野で講演や執筆活動、現地調査などを行う。

2025年11月下旬から12月上旬にかけて、タジキスタンのハトロン州で発生した中国人労働者への連続攻撃事件は、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」が抱える構造的な脆弱性を露呈させた。

特に11月26日夜、そしてその数日後の攻撃では、アフガニスタンと国境を接するシャムシディン・ショーヒン地区にある中国系金鉱採掘会社「LLC Shohin SM」の施設が、アフガン領内から発射されたと見られるドローンと銃器による攻撃を受け、合わせて少なくとも5人の中国人職員が殺害された。

この国境地帯で、中国の資本と人的プレゼンスが明確なテロの標的となった事実は、単なる国境を越えた犯罪行為として片付けられるべきではない。これは、北京政府が推進する経済的覇権拡大戦略、すなわち一帯一路が、結果として現地社会の深い反発を呼び起こし、「反中テロ」という名の予期せぬ代償を支払わされている、その具体的な帰結を示すものである。

タジキスタンにおける中国の金鉱採掘が象徴する「経済侵略」

中国の対外戦略は、軍事力ではなく、莫大な資本を投じた経済活動を最前線に置くという特徴を持つ。中央アジアや南アジアにおいて、中国の企業は資源開発、インフラ建設、戦略的な港湾運営といった分野で、文字通り現地の経済を「侵略」してきた。

タジキスタンにおける金鉱採掘もその一例であり、中国資本が巨額の投資と引き換えに、国家的な資源権益を事実上独占する構図が成立している。この現象は、地元政府との密接な関係と巨額の賄賂によって、地域社会の利益を顧みずに強行されることが多く、結果として、現地の社会経済構造に深い歪みをもたらす。

この種の投資は、現地政府にとっては短期間の経済成長の糧となるかもしれないが、地域住民にとっては恩恵よりも搾取として認識されることが多い。中国企業は、効率を優先し、自国から労働者や資材を連れてくるため、雇用機会は地元にはほとんど還元されない。さらに、環境アセスメントを無視した杜撰な資源開発や、中国への過度な債務依存、そして何よりも一国の経済主権の侵害に対する懸念は、現地住民の間に慢性的な不満と不信感を醸成する。

これが「経済的侵略」と呼ばれる所以であり、その不満と抵抗の矛先は、北京の支配の代行者と見なされる現場の中国人労働者や中国資産へと向かうのは、構造的な必然性と言える。

「ドローンでの攻撃」が意味するものとは?