米国が南シナ海でのプレゼンスを維持する動きを見せている。

23日にワシントンで開かれた外相級会談で、米国、フィリピン両政府は、南シナ海での中国の覇権拡大に対処するため、「米比相互防衛条約」を南シナ海での「有事」にも適用し、米国はフィリピンを防衛することに合意した。同時に、フィリピン軍の装備を増強・更新する。フィリピンのアキノ大統領は、約2億5000万円の予算を割り当てる方針で、米側が装備などを供与する。

また、キャンベル米国務次官補は24日の記者会見で、中国やベトナム、フィリピンなどが領有権を争う南シナ海問題について「米国には南シナ海の炎をあおる意図はない」と延べ、25日にホノルルで開催される米中協議では中国側に自制を求める考えを示した。キャンベル次官補はその後26日から7月1日にかけて、サモア、トンガ、パラオ、マーシャル諸島など南太平洋8カ国を、ウォルシュ米海軍太平洋艦隊司令官とともに訪問する。これは異例の訪問で中国をけん制する狙いと見られている。

だが、一方で日本に対しては、24日の記者会見でキャンベル次官補は、米海軍普天間基地の2014年までの移設断念について「クリントン国務長官とゲーツ国防長官から日本側には進展が必要と伝えてある」「日本政府はその責務を果たすよう断続的に取り組むことだ」と念を押している。

米国は深刻な財政赤字に陥っており、アフガンからの撤退も急いでいる。そのなかで南シナ海に勢力を注ぎ始めているということは、日本への注力が弱まることを日本は覚悟しておかなければならないだろう。本欄でもこれまで報じてきたように、韓国、オーストラリア、フィリピンなど、周辺国は中国の覇権拡大に備えて軍備強化している。日本はこれ以上出遅れてはならない。(吉)