オバマ米大統領は、ホワイトハウスで22日夜に行なった演説で、アフガニスタンからの米軍撤退を来月にも開始し、年内に1万人、来年夏までに3万3千人を削減。当初の予定通り、2014年にもアフガン政府への治安権限委譲を完了させると表明した。

オバマ大統領は、5月の米海兵隊によるビンラディン氏殺害によって、アルカイダは「敗北への道」に入ったと軍事作戦の成果を強調。和平のためには政治的決着が必要として、武力の放棄とアフガン憲法に従うことを条件に、タリバンとの和平交渉を進めることを明らかにした。

「戦争の潮流は退きつつある」と戦局の進展を指摘したオバマ氏は、「(イラクやアフガンでの)長い戦争は責任ある終結を迎えるだろう」と、事実上の終戦宣言をした。

オバマ氏はまた、「アメリカ国内の国づくり(nation building)に専念すべき時だ」と述べ、アフガン・イラク戦争の戦費を、財政再建やエネルギー投資などに充てる考えを示した。

この13分間のオバマ演説をめぐっては、作戦への影響などの観点から、はやくも批判がでている。

23日付の米紙ワシントン・ポスト社説は、戦局が悪化する懸念を指摘した上で、「オバマ氏の撤退の決定は、戦略上の明確な根拠がなく、作戦失敗のリスクを高める」と批判した。同日付の米紙ニューヨーク・タイムズも社説で、「アフガンが手に負えなくなれば、アフガンはアル・カイダや他の過激派の基地となり、パキスタンや同国の90発の核兵器が狙われる。これはドミノ理論の妄想ではない」と論じている。

アフガン撤退後の次なる軍事的な懸案は、中国の軍拡や北朝鮮問題だろう。

しかし、ここで注意すべきは、アフガン、イランでの10年間の戦争の間に広がったアメリカ国内の孤立主義的な世論である。

財政赤字の問題などを背景に「アメリカ国内の国づくり」を訴えたオバマ氏は、軍事行動についても「脅威に直面した時は武力で対応しなければならない。しかしその武力が狙われる可能性がある時は、大規模な軍隊を海外に派遣する必要はない」と述べている。

オバマ氏が、各国間の協調に基づいた行動(international action)の重要性と、リビアで「同盟国を支援している」(アメリカ単独では戦っていない)ことを強調したこのくだりは、アメリカ単独での海外派兵を暗に否定しているように見えなくもない。

日本が中国や北朝鮮に相対すためには、アメリカの協力がぜひとも必要である。独自の防衛力を強化するとともに、中国や北朝鮮といった独裁国家が東アジアの平和をいかに脅かしているかについて、アメリカ世論の理解を促す努力をするべきである。また、アメリカが孤立主義に陥ることなく、東アジアに留まるよう、同盟国としての立場を生かして取り組む必要があるだろう。