アルバニアのAI大臣「ディエラ」(画像:ディエラのフェイスブックのアカウントより)。

 

《ニュース》

東欧のアルバニアが世界で初めて人工知能(AI)が生成した架空の人物を大臣として起用したことが、話題を呼んでいます。

《詳細》

アルバニアのエディ・ラマ首相は11日、マイクロソフトが開発協力したAIの女性キャラクター「Diella(ディエラ)」を、「AI担当大臣」に任命しました。ディエラとは、アルバニア語で太陽を意味します。

アルバニアでは元環境大臣や元首相が汚職で起訴されるなど、政権の中枢部にまで汚職が蔓延しており、犯罪組織絡みの汚職も絶えないなど、対策が急務となっています。これに対しラマ首相は、「賄賂」や「脅迫」に惑わされることのないAIを閣僚として起用することで「汚職大国」のイメージを払拭し、自身が最重要事項と位置付ける「2030年までの欧州連合(EU)加盟」を実現しようとしています。

AI大臣のディエラは、長年汚職が横行してきた「公共入札」の管理を担うといいます。国がどの民間企業に業務を委託するかを決める際、ディエラが入札に応募できる資格の有無を厳格に判定し、マネーロンダリングや麻薬密売、その他の違法行為の兆候を検知することなどで公共入札の透明性を高めるとしています。ラマ首相によると、最終的には入札に関するあらゆる決定が「公共入札の責任者」であるディエラの手に委ねられるといいますが、具体的なプロセスについては明かしていません。

ラマ首相はディエラが「100%腐敗のない」公共入札を実現とするとともに、「デジタル化とAIによる統治」を目指す国として同国を位置付けることに期待を寄せています。

さらに、ディエラには国際的な専門家を採用する権限も付与されるなど、単なる「公共入札の管理」にとどまらない役割を担うことも示唆されています。

ディエラは今年1月からアルバニア政府のプラットフォーム「e-Albania」でバーチャルアシスタントとして運用されており、市民が公的文書を取得するなどの際に、これまで100万件以上のリクエストに対処し、3万6600件以上のデジタル文書を発行するなどしてきました。今回、単に情報を提供する「案内役」から、国家の意思決定を担う「大臣」に昇格しました。ただし、複雑な入札を評価することは、市民からの書類要求の処理に対処することとは大きく異なります。

一方、野党からは、「閣僚は18歳以上の国民」と定めた同国の憲法に違反するとして、批判が相次いでいます。

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