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世界が驚くアルゼンチンの大改革に心血を注ぐミレイ大統領に対し、10月の中間選挙を前に逆風が吹き始めています。

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ミレイ氏は、ハイエクなどに代表される「オーストリア学派」に属する経済学者であり、筋金入りの自由主義者として知られています。

ミレイ氏は2023年12月に大統領に就任して以降、長年の左翼政権によって崩壊寸前の国家を立て直すべく、反対勢力による猛攻を浴びながらも大胆な経済改革を実行。次々と成果を挙げています。

まず、腐敗した官僚機構を大幅に縮小すべく、省庁の数を18から8に削減し、4万人近い公務員を解雇しました。また300以上もの規制を撤廃。米シンクタンクのケイトー研究所によれば、「1日2件」の規制緩和を実施したといいます。

さらに財政を黒字化させ、就任前は300%近くに達していたインフレ率も、今年7月には36%台にまで改善させました。その他、50%を超えていた貧困率を38%に、困窮率(ホームレスに近い生活困窮者)を20%から8%にまで減少させました。経済も成長軌道に乗せ、1~3月期の経済成長率は前年同期比で5.8%を記録し、実質賃金も上昇しました。

ミレイ氏は「1世紀にわたって破壊されてきたものを2年で修復することはできない」と述べており、減税(税の数を9割削減)や民営化など、今後もなすべき改革を進める決意を示しています。

そうした中、アルゼンチンでは10月に大幅な議席改選(上院の半数、下院の3分の1が改選)を伴う中間選挙が控えています。

その前哨戦として注目を集めたのが、今月7日に行われたブエノスアイレス州議会選挙です。同州は同国全体の有権者の4割近くが集中する重要な地域ですが、本選挙でミレイ大統領率いる与党「自由前進」は、最大野党「正義党(ペロン党、急進左派)」に敗北。同州は伝統的に「左翼の牙城」であるため、ミレイ氏側の苦戦はあらかじめ想定されていたとはいえ、予想を上回る敗北に「黄色信号」が灯っている状況です。

苦戦の原因は、8月末に「同氏の妹の汚職疑惑」が生じたためです。ミレイ氏と妹は疑惑を否定し、野党が選挙前にスキャンダルを画策したと非難しています。

世論調査会社トレスプントセロによれば、国民の9割はスキャンダルを認知しており、50%を超えていたミレイ氏の支持率は39%にまで下落したといいます。

ミレイ氏は前回の大統領選挙時にもメディアから捏造レベルの攻撃を受けており、今回の汚職疑惑の信憑性についても定かではありません。しかし、中間選挙でミレイ氏が勢力を伸ばせず、改革が頓挫すれば、アルゼンチンは悲惨な経済状況に逆戻りしてしまいかねません。

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