財政破綻が懸念されるギリシャは、7月に新たな国債償還期限を迎えるため、EUでは国債償還期限の延長など、追加の財政救済策が検討されており、23、24日の両日にはEU首脳会談が行なわれる。

昨年の救済策が単なる時間稼ぎに終わったことが露呈する中、さらに急進的な対策が検討され始めている。ここにきて浮上しているのが、欧州財務省の創設を含めたEU政治同盟の強化という案で、欧州中央銀行のトリシェ総裁も支持を表明している。

確かに各国間の財政政策の不一致がユーロに横たわる問題の一つではあるが、しかし、危機に乗じてヨーロッパ統合を進めれば世論の反発は避けられない。

英紙フィナンシャル・タイムズのコラムニストであるギデオン・ラッチマン氏は21日付の紙面で、「ユーロの本当の問題は政治的・文化的なものだ。共通通貨を進めるのに必要な、ヨーロッパ全体の政治的なアイデンティティは強くない」と論じ、文化・歴史的背景のあまりに異なるヨーロッパの各国を統合するのには無理があると述べている。

政治同盟とは対極にあるギリシャのデフォルトとユーロ脱退を唱える論調も、1年前に救済策が検討されたときよりも確実に強くなっている。ロンドン大学教授のコスタス・ラパヴィツァス氏は21日付の英紙ガーディアンで「デフォルトが起これば、経済には大打撃になるだろう。しかし、EU政策が犠牲にしてきた経済回復への道筋が見出せれば、ギリシャはこの苦境に耐える用意がある」と、ギリシャのユーロ脱退を論じている。

ユーロを脱退すれば、ギリシャは自国通貨安によって輸出を増やし、経済成長によって負債額を減らしてゆくことができる。ユーロ脱退の論調の背景にあるのは、経済成長こそが財政再建への最善の道ということである。

財政問題を機に、欧州では増税と歳出削減による緊縮財政が一種のブームになったが、いまやイギリスを中心に景気後退の懸念が広がっている。やはり人為的に創られたEUという組織の維持には無理があること、そして財政再建の近道は経済成長であって緊縮財政ではないということが、救済策をめぐる論調から見えてくる。