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米国際簡易裁判所が下した、トランプ大統領の広範な関税の大部分を差し止める判断について、米連邦巡回控訴裁判所(高裁)は29日、差し止めを一時停止しました。

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事の発端は、トランプ政権は関税政策を実行するにあたり、「国際緊急経済権限法(IEEPA)」を根拠に緊急事態宣言を行ったことです。この法律によって、国家安全保障などを理由に、議会の承認を経ずに輸出入への規制をかけることが可能になります。

一方、アメリカの中小企業やカリフォルニア州など複数の州は4月に、IEEPAに基づく関税措置は違法であるとして訴えを起こしていました。

こうした中、関税訴訟に関する米全土の管轄権を持つ国際簡易裁判所は5月28日、上記の原告の訴えを支持する形で、IEEPAに基づく相互関税などの措置は大統領の権限を逸脱し、「違法であり、無効」として恒久的な差し止めを命じました。

トランプ政権は不服として控訴します。キャロライン・レビット大統領報道官は同月29日、「トランプ大統領が米国の労働者のために強力な関税を課した根拠は法的に正当だ」「国際貿易裁の判事は司法権を乱用し、大統領の権限を奪おうとした」などと批判。国家経済会議(NEC)のケビン・ハセット委員長も同日、「重要な関税交渉の最中にあって、"活動家判事"たちが何かを遅らせようとしている」と指摘した上で、「控訴すれば、この判決は覆されるだろう」と述べました。

その後、連邦巡回区控訴裁判所が29日、簡易裁による差し止め命令を一時停止する判断を下しました。トランプ政権が同控訴裁で訴訟が審理されている間、一時停止を求めており、控訴裁がこれを認めた形になります。これにより、審理継続の間、関税が「復活」します。

控訴裁は原告に対し、6月5日までに反論書面を提出するよう指示。トランプ政権に対しても、その主張に対する反論書面を同9日までに提出するよう求めました。

なお、万一国際簡易裁の差し止め命令が下った場合に備えて、政権側はいくつかの代替案を準備しているとみられています。現在、重要鉱物への関税などに適用している「通商拡大法232条」をはじめ、通商法122条や301条の適用など複数の選択肢を有しているとされ、いずれにせよ「貿易戦争は終わらない」との見方が強いです。

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