原発再開の是非を問うイタリアの国民投票で13日、「再開反対」が9割を超え、原子炉の新たな建設や再稼働が凍結される見通しとなった。

ヨーロッパ(欧州)では、電力市場の自由化が進んで送電網が整備されているため、不足時には国境を超えて電力を融通しあえる。イタリアも隣のフランスから電力を輸入しているが、そのフランスは電力の7割以上を原発に頼っている状況だ(14日付日経新聞)。今月6日に国内すべての原発を2022年までに止めることを閣議決定したドイツも、原発推進国のフランスやチェコから電力を輸入している(※)。

今回、ドイツやスイスに続いて、イタリアが「脱原発」を決めたことで懸念されるのは、欧州諸国に「原発アレルギー」が伝染することである。たとえば、2012年のフランス大統領選で、原発反対派が大統領になったり、世論に押されてサルコジ大統領が「反原発」に舵を切れば、欧州は大混乱に陥るだろう。フランスが原発を続けたとしても、特定の国に電力を依存するのは欧州全体にとって危険である。

日本でも、14日付朝日新聞が「原発『段階的廃止』74%」という世論調査の結果を大々的に報じるなど、菅首相をはじめとする左翼勢力が、「脱原発」の旗を振っている。

だが、すべての原発を止めて火力発電にシフトした場合、毎月の家庭の電気料金が平均1000円以上アップするという試算もある。今、原発を止めれば、不況で苦しむ家庭も企業も打撃を受けてさらに日本経済が衰退するだろう。国防の観点からも問題だ。つまり、原発に代わる発電技術が確立されていない段階での「脱原発」は、日本の「脱繁栄」「脱発展」を招くだけなのである。(格)

【本欄参考記事】

6月7日付 ドイツの脱原発は国を滅ぼす道 < http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=2140 >

6月8日付 恐怖の支配で、来春にすべての原発が止まる? < http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=2144 >

6月9日付 OPEC原油増産見送り やっぱり原発は大事 < http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=2151 >

6月10日付 電力不足で企業の海外移転が加速 関西電力も15%節電要請へ < http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=2159 >