2024年10月号記事
なぜアメリカは内戦前夜なのか
「青い州からの大脱出」が物語る現代アメリカの地殻変動
青い州から赤い州に移転する"社会現象"が起きている
映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』が3月に全米で公開されると、話題を呼んだ。映画には人々が武器を手にとって戦う物騒な世界が描かれている。
11月の米大統領選で不正投票が行われ、2016年に起きたような接戦州での逆転劇が展開したら、そのようなシナリオは現実化するのか──。
著名投資家が描く内戦の確率
実は最近、「内戦」が起こる可能性について警鐘を鳴らした人物がいる。著名な投資家のレイ・ダリオ氏だ。
世界で最も影響力のあるヘッジファンド「ブリッジウォーター・アソシエイツ」の創設者ダリオ氏は、英紙フィナンシャル・タイムズのインタビューで「アメリカで内戦の可能性が高まっている。内戦が起こる確率は35〜40%だ」と述べ、衝撃を与えた(*1)。
ダリオ氏が描く内戦は「必ずしも人々が『銃を手に取り発砲を始める』かたちではなく(その可能性も否定はしていないが)、人々が自分たちの望むものにより合致した州に移動し、反対の政治的説得を行う連邦当局の決定に従わない」というものになる、という。
(*1)Bridgewater founder Ray Dalio warns of danger of US debt to Treasury market, 2024年5月16日付英紙Financial Times
足で投票するアメリカ人
それは実は「すでに起きた未来」であり、まさに今アメリカで起きている地殻変動だ。
例えば、イーロン・マスク氏は7月中旬に自身の2つの会社、X社とスペースX社の本社をカリフォルニア州からテキサス州に移すと発表した。この発表は、カリフォルニア州知事のギャビン・ニューサム氏(民主党)が、子供がトランスジェンダーの場合、学校から家庭への通知を禁ずることを目的とした新法に署名したことを受けてのこと。子供の性自認について親が知る権利を失うということは、親が子供を守れなくなることを意味する。性転換手術で事実上、自身の子供を失ったと語るマスク氏は、州が制定する法律は悪法だとして、従業員を守るために、青い州(民主党の強い州)であるカリフォルニア州から赤い州(共和党の強い州)であるテキサス州に脱出を図った。「足による投票」で、堂々とテキサス州への支持を表明した格好となった。
人とお金が「青い州」から脱出する理由
繁栄への道は赤い州にある
ラッファー博士インタビュー/「経済成長」が分断を癒す