カマラ・ハリス米副大統領は、8月2日、オンライン投票で必要な代議員の過半数を確保し、民主党の大統領候補者として決定した。ペロシ元下院議長、民主党の上院・下院の両代表、クリントン元大統領夫妻、そして難色を示していたオバマ元大統領夫妻の支持も獲得した。
ハリス氏は、トランプ前大統領よりも20歳近く若く、"黒人の女性"であるという武器を最大限に生かしてキャンペーンを展開している。ミドルクラス(年収40万ドル[約6000万円]以下)には増税しないなどの選挙公約も発表され、バイデン大統領に失望していた多くの民主党支持者、特に青年・女性・黒人層が、「トランプ氏に勝てるかもしれない」という希望を見出し、選挙活動が活発化していると報道されている。
実際、ハリウッド関係者やNetflix創業者などの支援もあり、ハリス氏の選挙活動には歴史的スピードで献金が集まった。1週間で2億ドル(約300億円)の資金が集まり、初めての献金者が全体の66%を占め、支持層が拡大しているという(7月28日付ブルームバーグなど)。
ハリス陣営はすでに全米で大規模なCM展開やPR活動を行っているが、今後3週間で6州において5000万ドル(約75億円)の広告費を投じる予定であるという報道もあった(7月25日付ワシントン・ポスト)。すでにハリス氏のインターネット上のCMやPRは、トランプ氏の量をはるかに上回っており、一週間という期間では史上最高額を投入(7月の最終週)。ネットでニュースサイトや動画などを見ようとすると、非常に頻繁にハリス氏が登場する。
一方、保守系メディアのニューヨーク・ポスト紙は、ハリス氏が30歳以上年上の恋人などに支えられて出世してきたことなどを報じている(7月31日付)。ハリス氏は学生時代から美人でユーモアのセンスがあり、人気者だったという。過去を見る限り、彼女は宗教的に言えば、典型的な「画皮」(人をたぶらかす妖怪)と言えるのではないだろうか。
こうした中で、ハリス氏の支持率は上昇し、全国や激戦州の支持率でトランプ氏との差を縮めている(8月3日時点での主要世論調査平均値では、トランプ氏との差は1.3%[出典:Real Clear Politics])。民主党はこの"ハネムーン"が選挙日まで続くことを願っていると言われている。
画像はhttps://www.realclearpolling.com/polls/president/general/2024/trump-vs-harrisより。
ハリス氏の資質や政策に関心を持つ有権者
トランプ氏は、7月31日にシカゴで開かれた全米黒人記者協会で、ハリス氏について「ずっとインド系だとアピールしていたのに、突然黒人に変わった」などと発言し、ハリス氏が人種を武器にしようとしていることを批判した。即座にハリス氏は非難声明を出し、主要メディアも批判的に報道し、共和党上院議員も、トランプ氏の「人種発言」に不快感と懸念を示した(8月2日付The Hill)。
今までであれば、黒人層の猛反発をくらい、トランプ氏の支持率が急減するところだが、今回、メディアや有権者の間での波紋はそれほど続かず、例えば、8月3日付ニューヨーク・タイムズ紙は、「ハリス氏の人種は大きな問題ではない。トランプ氏の発言に関わらず、有権者は、ハリス氏がどういう人で、どういう大統領になるのかについて、もっと聞きたいと思っている」と報じ、世論調査などに基づいて、有権者はハリス氏の資質や政策への関心の方が高いことを示している。
副大統領として非常に問題が多かったハリス氏
副大統領としてのハリス氏は、非常に問題が多かった。
インタビューを受けても、一貫した会話ができずに突然の大笑いでごまかす。バイデン大統領から、2021年3月に移民・国境管理政策の責任者に任命されながら数カ月間国境を訪問せず、「不法移民の根源的原因は『気候変動』だ」と述べる。国境を訪問していないことを指摘された時には「私はヨーロッパにも行っていない」などと意味不明な抗弁をして、失笑を買った。過去には「警察予算を削れ」運動にも参加。ロシア・ウクライナ戦争が始まった時の会見で、ウクライナをNATO(北大西洋条約機構)加盟国と思っていたほど国際見識が低かった。そして副大統領として史上最低の支持率を記録した(6月26日付NBC)。