《ニュース》

トランスジェンダーの申立人が、性器の外観を変える手術をせずに戸籍上の性別を男性から女性に変更するよう求めた家事裁判で、広島高等裁判所は10日、性別の変更を認める決定を出しました。手術なしでの性別変更が認められるのは極めて異例です。

《詳細》

今回の裁判は、最高裁判所が昨年10月に下した「生殖能力をなくす手術を必要とする法律の規定は違憲であり、無効」とする決定の続きにあたります。

2004年に施行された「性同一性障害特例法(特例法)」では、戸籍上の性別を変更するための条件として、5要件が定められています。そのうち、「生殖腺がない/永続的に生殖機能を欠く状態であること(生殖能力要件)」「身体の性器が移行した性別と近い外観になっていること(外観要件)」の2つについては手術が必要になります。

これに関して、最高裁は昨年10月、「生殖能力要件」は憲法13条が保障する「意思に反して身体への侵襲を受けない自由」を制約しているとして、「違憲であり、無効」とする決定を下しました。もう一つの「外観要件」については高裁段階での審理が必要だとして、差し戻していました。

そして広島高裁は、外観要件は「違憲の疑いがあるといわざるを得ない」とし、性別の変更を認める決定を下しました。高裁は、申立人がホルモン療法を経て「性別変更後の性器に近しい外見を有している」と判断し、外観要件を満たしているとしています。

なお、昨年の最高裁の決定を受けて、政府・立法府は手術要件の規定を特例法の条文から削除・変更する改正案を検討することが求められています。すでに立憲民主党が6月に同要件を削除した改正案を国会に提出したほか、自民党内でも検討され始めています。

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