2024年5月号記事
ラッファー博士インタビュー Part 2
円安志向と保護主義では日本は復活できない
「貿易黒字=善」は大いなる幻想
サプライサイド経済学の父であるアーサー・ラッファー博士は、日本の行く末をどう見ているのか。前回に続き紹介する。
アーサー・B.
ラッファー博士
ラッファー博士(以下、ラ): ここで貿易における「親日」と「反日」の2つのケースについてお話をしてみたいと思います。
日本で、例えば小渕首相のような方が首相となり、所得税等の最高税率を引き下げたとします。すると、経済成長への期待から株価が上昇し、これがさらに日本への投資を呼び込みます。この場合、外国人はドルを売って日本円を買い、日本の株を買うことになる。その場合、誰がその円を売ってくれるのでしょうか。残念ながらそれは円を手放したい人たち、例えば日本からほかの国に出たい人たちです。つまりゼロサム・ゲームということです。
私がドルを売り100円を買えば、誰かが100円分ドルを買わなければなりません。一方のアメリカ人がドルではなく円を所有し、もう一方のアメリカ人が円ではなくドルを所有している。このケースでは、日本への純投資はありません。
日本の貿易赤字の本当の意味を考えてみよう
ラ: 日米間で日本への純投資が行われる唯一の方法は、アメリカが日本へのモノの売却を増やし、日本からのモノの購入を減らすことです。日本に私たちがより多くの商品を売るということは、その商品を売って円を得るということであり、日本からより少ない商品を買うことで、私たちが失う円はより少なくなります。
国際収支は、2つのものから成り立ちます。すなわち資本収支と貿易収支(*1)です。どちらも国にとって重要です。
外国人投資家が日本に投資する唯一の方法は、日本への商品販売を増やし、日本からの商品購入を減らすことです。
過去、日本が資本黒字になった理由は、減税を行うことで、日本が外国人投資家にとってより魅力的な国になったからです。
つまり、日本の貿易赤字は日本の資本黒字なのです。日本は外国から資本を呼び込む資本の磁石になったのです。
戦後、日本は資本を輸入して日本人を雇用し、生産性を高め、世界の成長をリードした(*2)。貿易赤字、資本黒字、その結果が高い成長率となって表れたのです。これが貿易における「親日」です。
(*1)博士が「経常収支」ではなく、「貿易収支」という言葉を使っているのは、海外の配当の利益等を除いた「貿易」による利益について、話題を限定するためである。
(*2)高度成長期の日本の貿易は赤字基調であった。博士は日本が貿易赤字、つまり資本黒字だったことで、経済成長したと見ている。
※文中や注の特に断りのない『 』は、いずれも大川隆法著、幸福の科学出版刊。
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