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2024年の米大統領選まで1年を切る中、「人工妊娠中絶」を争点に、共和党陣営が保守州でも苦戦を強いられています。

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今月第2週目に行われた、ケンタッキー州知事選、オハイオ州の住民投票、バージニア州議会選で、いずれも人工妊娠中絶擁護派と、中絶擁護を掲げる民主党陣営が勝利しました。

ケンタッキー州とオハイオ州は2020年の大統領選でトランプ前大統領が勝利しており、バージニア州では21年に共和党の州知事が当選しています(20年の大統領選では同州はバイデン大統領を選出)。保守層の影響が大きいとされるこれらの州で、中絶擁護派が続けて勝利を収めたことに注目が集まり、民主党陣営にとって24年の大統領選勝利に向けた希望だと、ニューヨーク・タイムズやポリティコ、ワシントン・ポストなど各紙が分析を報じています。

本誌で取り上げてきたように、米連邦最高裁は長らく、「連邦政府は中絶の規定を設ける権限を持たない」と各州に判断を委ねてきましたが、1973年の「ロー対ウェイド判決」で「中絶は憲法上の権利」だと認めました。これに対して2022年6月、トランプ氏の任命を受け最高裁で保守派の判事が多数を占めるようになったこともあり、「ドブス対ジャクソン判決」によって同判決が覆され、妊娠6週目を過ぎてからの中絶禁止に関し、改めて各州に判断が委ねられた流れです。

これを受け民主党陣営は22年11月の中間選挙で、インフレや治安悪化などから有権者の目を背けたいという思惑も大いに働き、「共和党は女性の権利を奪う」と強調。これによって無党派層や穏健派の共和党支持者の多くが民主党に流れ、独身女性の7割が民主党支持に回ったとされます(詳細は関連記事:「米中間選挙の真相とアメリカ復権への道」)。

24年の大統領選でも、民主党陣営は妊娠中絶を争点化することで票固めを狙う構え。一方の共和党陣営は、地盤である保守層と勝敗を分ける無党派層の取り込みを両立させる道が見えず、苦戦を強いられる可能性が高いと指摘されています。

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