© 「おしょりん」制作委員会
2023年11月号記事
Pick Up Movie
編集部がオススメする「今こそ観たい」映像作品。
「おしょりん」
2023年10月20日(金)福井先行公開 11月3日(金・祝)全国公開
無償の愛に支えられ続けた、道なき道への歩み
- 【キャスト】
- 出演:北乃きい、森崎ウィン、かたせ梨乃、小泉孝太郎 ほか
- 【公開日】
- 2023年10月20日(金) 福井先行公開 11月3日(金・祝) 角川シネマ有楽町ほか全国公開
- 【配給等】
- 配給:KADOKAWA
© 「おしょりん」制作委員会
【レビュー】
日本のメガネの95%を生産し、世界の三大生産地の一つでもある福井県。その始まりは明治時代。豪雪地帯のため、冬は収入の道がなくなる福井の村を助けようと、ゼロからメガネ産業を立ち上げ、全身全霊を注いだ人々がいた。その史実をもとに、"メガネの聖地"福井の成り立ちを追いかけ、"ものづくり"へ込めた願い、渾身の技と魂を吹き込む職人たち、彼らを支え続けた創業者とその家族を描く、感動の物語が完成した。
時は明治37年、麻生津村生野の庄屋の長男・増永五左衛門(小泉孝太郎)とその妻・むめ(北乃きい)の元へ、大阪で働く五左衛門の弟・幸八(森崎ウィン)が帰郷する。村を挙げてのメガネ作りを勧めるためだ。福井では知る人もほとんどいないが、富国強兵策と活字文化の普及で必ず必需品になるという。優秀な福井の職人なら、必ず日本一の製品を作り上げ、冬の暮らしを助けるはず……。
五左衛門たちは猛反対する。だが、生まれつき視力の弱かった子供が、メガネを通して初めて"きれい"な世界を見て人生が変わった瞬間を目の当たりにし、メガネ作りを決断した。
厳しい修行の末に作ったメガネが何度も問屋から突き返され、幾度も資金難に陥るが、やがて「いい出来だ」と評価されるまでになる。
しかし、借金返済の目処が立たず、銀行は融資凍結を宣告。それでも彼らを信じ、支え続けたむめ。彼女の強い励ましで、彼らは起死回生の最後の賭けに臨む……。
「おしょりん」とは、降り積もった雪が固く凍結した状態を指す福井の方言。むめの無償の愛とともに確実に一歩を進めながら、真っ白な道なき道を歩き続けていった彼らの姿が、そこに重なる。ラストでの五左衛門の決断にも、かの渋沢栄一の経営思想の片鱗が見えるようだ。
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ザ・リバティWeb シネマレビュー
「おしょりん」
(星4つ。満点は5つ)