北朝鮮の金正日総書記の訪中は、北の対中依存を示すとともに、いくら追い詰められても中国の援助がある限り北の体制が生き残れるということを明らかにした。韓国は、昨年の哨戒艦撃沈と延坪島(ヨンビョンド)砲撃について北朝鮮に謝罪を求め、北からの食糧援助の要請も拒否するなど強硬姿勢を続けているが、こうした韓国政府の姿勢が、北朝鮮を中国に接近させてしまったという批判が出始めている。

5月29日付のコリア・タイムズでは、高麗大学校のキム・トン教授が、北朝鮮の謝罪が政治的に不可能であることからして、北の対中接近は当然の結果であると論じている。キム教授によれば、訪中時の声明で金正日氏は経済再建のために安定した対外関係が必要であると述べており、体制の生存が脅かされない限り、北朝鮮は戦争を望まない。その上で同教授は、「北朝鮮を中国に接近させたことは、広い意味で言って、戦略的に間違いだった」と述べている。

最近の対北政策をめぐっては、米韓が強固な協力関係を見せていたが、これにも若干の揺らぎが見られるようである。5月30日付の韓国・中央日報では、米戦略国際問題研究所のマイケル・グリーン上級顧問が、食糧援助をめぐって米韓のスタンスに違いが現れ始めたと論じている。グリーン氏によれば、人道的見地から北朝鮮への食糧援助を求める声がアメリカ国内で根強いほか、北への強硬政策で対話を閉ざすことは逆に危険であるという見方が出始めているという。

北朝鮮の中国接近が地域の安全保障上好ましくないとしても、太陽政策の例を挙げるまでもなく、安易に援助を再開して北の体制の延命を助けることも、日韓米の国益に適わないだろう。今回の金正日氏訪中で明らかになったように、北朝鮮問題は結局のところ中国が鍵を握っており、長期的には米中間の競争の一部とも解釈できる。そう俯瞰して考えれば、日米韓はパートナーシップを高め、北朝鮮の挑発と中国の軍拡に対して毅然たる姿勢を崩すべきでないというのが、大筋の戦略なのであろう。

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