2023年9月号記事

妖怪国家からの脱却

空気を支配する者の正体

日本人は無宗教が多いと言われているが、意外に妖怪の存在を信じている。実は妖怪は魑魅魍魎の世界ではなく、あなたの身近に潜んでいた。


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「ネット妖怪」は虚構の人気と数字で人をたぶらかす

人気が高い、あるいはSNSのフォロワーがたくさんいる人や会社は、正当な努力をしていることも多い一方で、人気や数字が本物ではないというケースもかなりあるようだ。

30代の会社員、佐藤芳樹さん(仮名)は一時期、小遣い稼ぎのために、企業イメージを上げるためのサクラ(やらせ)をしていた(本誌21ページに体験談)。

「商品を購入し、インターネット上でレビューを書いて、商品を別ルートで販売元に返品していました。購入金額と数百円の手間賃が銀行口座に振り込まれる仕組みです」

よい評価を書きこむやらせは、ネット通販やグルメサイトなどでよく見られる。依頼した会社には「ネットの評判がよくないと商品を買ってもらえない」「検索結果に表示されやすくしたい」などの焦りや不安があり、つい手を出してしまうのだろう。

しかし、嘘の口コミを書かせてネット上の評判を操作しようとすれば悪質性が高くなり、法に触れるケースもあると見られる。

こうしたネット上の人気について、大川総裁は『妖怪にならないための言葉』の中で、「妖怪は流行神の陰にもかくれている。『人気』や『フォロワー数』の裏にある邪気を感じ取れ。」と指摘する。

さらに、SNSで10万の「いいね」が集まった投稿が、実は5人くらいが「いいね」をつけていただけという事例を紹介し、「こういうのは、実体を伴っていないものです。(中略)最近こうした実体を伴っていない人気みたいなものもいっぱい増えてきている」と述べた(*1)。

1万円を支払えば、1万人分のフォロワーを増やすことができるなど、「フォロワーを増やす代行ビジネス」が存在する。代行ビジネスの購入者には、誰もが知る企業や著名人もいるという(*2)。

もちろん、虚構の人気や数字をつくり出して評判を高めることは、人々を騙す行為に他ならず、許されるべきことではない。

(*1)「『妖怪にならないための言葉』発刊記念対談」
(*2)2020年9月24日放送のNHKクローズアップ現代「追跡! クリック代行ビジネス」の中で、クリック仲介業者が顧客には誰もが知っている企業や著名人がいると明かしている。

 

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