アメリカの国際政治学者、スティーブン・ウォルト・ハーバード大ケネディ行政大学院教授が米外交誌「フォーリン・ポリシー」(ウェブ版)で、6月末に退任するゲーツ米国防長官のこれまでの仕事ぶりを絶賛している。

  • 私はゲーツ長官の大ファンだ。当初の期待を超えた仕事だと認めたい。ゲーツ氏は世界経営という難しい仕事に対し、現実主義者として、素晴らしいバランス感覚、常識、想像力を発揮した。
  • ゲーツ氏の最後の政策スピーチは、アイゼンハワー大統領が「軍産複合体」の存在について警告した離任演説ほどではないが、米国防総省が為すべき内容について現実的な見方を示した。それは、アメリカがより少ない財政負担で世界経営を行わなければならないということだ。
  • アメリカの国防費に対しては、今後さまざまな圧力がかかり、アメリカの世界支配に限界をもたらすだろう。アメリカは唯一かつ最大の影響力を持つだろうが、第二次大戦後や冷戦後のような支配的な力はなくなる。将来のアメリカの指導者は、地域の同盟国に依存することになり、その同盟国はアメリカの指導に従わなくなるだろう。これから6年間で、私たちはこの事態に慣れるであろう。

今後6年間とは、オバマ大統領が再選するとして、2期目も含めた期間ということだ。オバマ大統領は財政赤字削減のため国防費の削減を進めてきたが、ゲーツ長官が体を張って、最小限の支出カットにとどめてきた。次期国防長官は、クリントン政権下で行政管理予算局局長として財政黒字化を達成したパネッタ現CIA長官。

ウォルト氏はこれから6年間で「世界の警察官」としてのアメリカの役割が縮小すると予想している。日本にとっては、アメリカに頼らなくても国を守れる体制づくりを進めなければならない時期だということだ。(織)

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