来年の大統領選に向けて、バイデン民主党政権はどこに向かうのか。民主党候補再選の見込みはあるのか──。未来を占うには、現在のバイデン民主党政権が行っていることを検証する必要がある。

参考になるのは、米保守言論界をリードするビクター・デービス・ハンソン氏の考察だ。今回は、ザ・リバティ3月号の「米民主党政治の闇 神を追放した民主主義政治の末路」に誌面の都合上、掲載できなかったハンソン氏のインタビューを紹介したい。ザ・リバティ3月号と併せてお読みいただければ、アメリカが現在直面している問題への理解が深まるだろう。

 

歴史学者

ビクター・デービス・ハンソン

(Dr. Victor Davis Hanson)米スタンフォード大学フーバー研究所の軍事史上級研究員、カリフォルニア州大学フレズノ校の古典学名誉教授。『The Case for Trump』をはじめ、古代ギリシャから現代まで幅広いテーマで20冊以上の著書がある。カリフォルニア州セルマで農業を営む。

 

──バイデン政権は「トランプ派の共和党は半ファシストだ」「中間選挙で勝てば民主主義が危うくなる」と、国民の半分にレッテルを貼りました。このような主張をどうご覧になっていますか。

ハンソン氏:バイデン大統領のトランプ支持派に対する非難は、残念なものでした。3つの観点から説明しましょう。

(1)ファシストとレッテルを貼るのは間違っています。国境の混乱、ハイパーインフレ、犯罪の増加、エネルギー自給国家ではなくなったこと、人種的分断をかえって促進していること、アフガニスタンからの不様な撤退などに、国民の半分が不満を持っています。その不満は非難されるべきものではなく、対処されるべきものです。

(2)どのような立憲国家も、国民の半分を非難して済ませることはできません。アメリカ史上最も凄惨で国を二分した1861年の南北戦争の教訓で、私たちは学んできた通りです。

(3)現在、革命を求めている人々は(伝統を守ろうとする)伝統主義者ではありません。彼ら左派は、国境を破壊し、フィリバスター(*1)を廃止し、最高裁判所の判事を増やし(*2)、プエルトリコを州に編入してリベラルな上院議員をあと2人確保し、州で投票法を定めるという憲法命令を無効にしようとしています。

これは革命的で、かつて試みられたことのないほど、過激な制度的な措置です。

バイデン氏が、トランプ支持者の保守派を悪魔化し続けることは、ユーゴスラビアのような内紛を招くだけとなります。

左派リベラルは危機に乗じて暗躍する

──左派リベラルは、自らを「リベラル」と称しながら、他の保守派の言論を弾圧する方向に動くことが多いように見受けられます。国民に平等を保障すると言いながら、正しい情報を発信し判断してもらうという民主主義にとって、非常に重要な手続きを無視しているようです。彼らの国民を統治する手法について、どのようにご覧になっていますか。

ハンソン氏:左派の議題に喜んで投票する人は実はいません。それは自然に反したことだからです。

2008年のリーマンショック、新型コロナウィルス、(黒人が白人の警察官に殺された)ジョージ・フロイドの死、トランプ氏の「脅威」、「ロシアの偽情報」(*3)、2021年1月6日の「暴動」のような情勢不安に目をつけて、危機に乗じるやり方で権力を拡大しようとするのです。

そうやって左派は、国民の気を逸らし相手の人格を攻撃します。これはまさにマルクス主義者が行ってきたことです。

例えばヒラリー・クリントン氏は2016年、クリストファー・スティール氏を雇って、FBIと民間業者の助けを借りてトランプ氏を中傷し、「トランプとロシアは共謀している」として事実をねつ造。それによって自分自身の問題の"痕跡"を抹消したのです。

2020年の選挙前に明らかになったバイデン氏の息子ハンター・バイデン氏のノートパソコンの本当の情報が抑圧されたのも同様です。いわゆる「専門家」が登場して、トランプとロシアの偽情報だと断言し、実際にはノートパソコンの真偽について国民に誤報を流したのです。

電子化時代において左派は、ハイテク、インターネット、ソーシャルメディアに精通し、グーグルの検索の順番からツイッター社のシャドーバン(*4)まで、その操作にかけては、保守派より何年も先んじています。保守派は彼らが何をしているかを何も知らないか、常に一歩遅れて応戦しています。

左派は、コロナやジョージ・フロイドの暴動を隠れ蓑にして、選挙制度を完全に破壊しました。これまで選挙は、選挙当日に結果が出るものでした。

これが監査や真偽を確かめることがほとんど不可能な郵便投票になったことで、左派に圧倒的に有利な制度となり、投票日の数カ月前に勝敗が決まっている"郵送投票現象"へと変えられてしまったのです。

グローバリストたちは、美辞麗句を隠れ蓑に海賊行為を正当化してきた

──アメリカのアップルやグーグルなどのビッグテック、コカ・コーラやナイキのような大企業は基本的にリベラルであり、彼らの利益の最大化を求めている一方で、アメリカという国の繁栄を軽んじているように見えます。こうしたグローバリズムの問題について、ハンソンさんはどのようにお考えでしょうか。

ハンソン氏:何年も前に私たちの多くが警告した通りのことが起きています。

つまりグローバリズムとは、企業が自国民に対する一切の社会的責任を放棄し、自国の価値を裏切り、利益を果てしなく追求する以外に政治的忠誠心を持たない国際主義者のことを指し、グローバリズムとは、それを遠回しに表現しているにすぎません。

彼らはこの30年間、中国共産党と連携する一方で、共産党政権のその非道な行為を見逃し、西側の政府を根底から損なってきました。

これらの企業は、「気候変動」「多様性」「持続可能性」という言葉を隠れ蓑にして、彼らの海賊的行為を覆い隠しています。

(世界経済フォーラムの創設者である)クラウス・シュワブ氏と彼らの掲げるグレート・リセット(現在の社会を構成する金融や社会経済などのさまざまなシステムを一度すべてリセットし、再構築すること)は、非常に非民主的な性格を持っています。

彼らは、選挙で選ばれた政府を超えて、国際商業システムを自分たちの議題に合うように不正に操作しようとするグローバリストです。だからこそ彼らは、自分たちの国は自分たちで統治するという自治の原則を重んじ、トップダウンの命令に懐疑的な西側諸国の中産階級を嫌っているのです。

バイデン民主党の恥ずべき迎合型の政策

──バイデン氏は中間選挙前、大麻所持の合法化といった不道徳な政策や、学生ローンの免除に見られるように、国民迎合型の政策を推し進めていました。このようなバイデン政権の政策を、どのように見ておられますか?

ハンソン氏:バイデン氏が選挙前に掲げた迎合型の政策は恥ずべきものでした。

ガソリンの値段を下げるために、石油の戦略的備蓄を放出して、若い有権者の票を買収しようとしましたが、それは成功したようです。バイデン氏は、(サウジアラビアなどの)非民主的な国にもっと石油を産出するようにお願いまでしていましたよ。

いずれも国益に反する行為でした。

バイデン氏が突然、薬物犯罪者や学生ローンの貸し倒れ者に恩赦を与えたのも同様で、どちらも公益を犠牲にして票を買うために行ったことです。

──リベラリズムの本質とは何だと思いますか?

ハンソン氏:左派リベラルの信条には、国家が教育を管理し、ユートピア的な決まり文句に従って個人の生活を規制する手段があれば、人間の本質は常に改善可能だと考える不幸なナイーブさがあります。

今日の「リベラリズム」が「自由」、つまり自分で考え、それに従って行動する個人の権利を嫌うのは、なんとも奇妙なことです。

人間は生まれながらにして完全ではなく、宗教や、昔から伝わる文明の法則・規則、過去に成功した文化的伝統や習慣を守ることによってのみ救われるという考えは、彼らにとって受け入れがたいのです。

下院での追及を急げ

──昨年11月の中間選挙で、共和党が下院で多数党となりました。彼らが取り組むべき喫緊の課題とは何でしょうか。

ハンソン氏:まず下院の調査委員会がすべきこととして2つあります。バイデン一族が自国を犠牲にして、彼らの利益のために政治的影響力を引き換えにしてきたということを、息子のハンター・バイデン氏のノートパソコンを引き合いに出して家族を調査することです。もう一つは、コロナ危機の時に、連邦保健局が自らに権力を集めるために、個人の自由を剥奪し、誤った情報を流布したことも調査することが必要です。

さらにもう一つは、統制のとれた多数派である共和党は、バイデン政権の悲惨な新法制定をすべて阻止することです。

経済の低迷、犯罪の増加、大量の不法移民など、記録的に低い大統領としての「成果」を考えますと、中間選挙で共和党は上下両院で多数派を獲得する機会がありました。

残念ながら共和党内部の内紛や前向きな議題の欠如、左派が資金調達に熟達していることについての無知、選挙日以外に投票できるようになったこと、ソーシャルメディアの活用などといった要因から、彼らの勝利が阻止されたのです。

(*1) 上院議員に与えられた審議引き延ばし手段の総称。米映画「スミス都へ行く」では主人公ジェフ・スミスが、腐敗した政治家と戦うために、たった一人でほぼ24時間にわたって演説を続け、支持を獲得する姿が大衆の感動を呼び、1940年、アカデミー賞(原案賞)を受賞しており、アメリカでは肯定的に受けとめられている制度ではある。
(*2) トランプ政権下で保守派の最高裁判事の数が多数派になったことから、民主党は最高裁判事の数を現在の9人から13人に増やし、多数派を逆転させる計画を持つ。
(*3)2020年の大統領選直前、バイデン氏の息子のハンター氏の汚職疑惑が報じられたが、民主党陣営は「ロシアによる偽情報」と反撃し、ツイッターやフェイスブックなどが記事などを検閲した。この情報に触れなかった人々がバイデン氏に投票したことから、選挙結果が検閲によって左右された可能性が高い。
(*4)ツイートやアカウントが他の人に見つかりにくい状態になることを示す俗語。

【関連書籍】

2023年3月号

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【ニュース】続々と押収されるバイデン機密文書!マスコミ誘導型の米民主党政治の闇に迫る!【ザ・ファクト×The Liberty】

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2023年1月号 米中間選挙の真相とアメリカ復権への道

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2022年10月号 「ポスト・バイデン」を考える 中間選挙間近のアメリカ

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2023年1月29日付本欄 債務上限をめぐる問題は歴史的な対決になる 2年間で約4兆ドルを使いこんだバイデン政権は素面(しらふ)になるのか

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2022年9月13日付本欄 囁かれ始めたアメリカの日本化!「ザ・ファクト」が「ザ・リバティ」の特集を読み解く番組を制作【ザ・ファクト×The Liberty】

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2022年7月8日付本欄 CNNも米民主党議員のバイデン酷評を独自報道「政権は指導者を欠き、目標がなく、望みもない」 世論調査では「大統領への信頼」が23%まで低下

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2022年6月27日付本欄 米メディア、タブー視されたバイデン大統領の「年齢問題」を立て続けに報道 今秋の中間選挙見据え"切り離し戦略"か

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