2023年2月号記事
あの時、叱られてよかった
──私が感じた「鬼の愛」
叱られるのは辛い。できれば避けたいと思いがちだ。
しかし、「あの時に叱られたから人生が変わった」という体験は誰もがあるはず。鬼教師や鬼上司の愛ある一喝を紹介する。
「耳も口もあるのになぜ使わない!」
自分の甘えと向き合わせてくれた教師 (30代・女性)
小学生の頃、人とは普通に話せたのですが、大勢の前で話すのがとにかく苦手で、担任の先生からはよく「一言でもいいよ」と言われていました。
でも、4年生の時の担任は違いました。5月に入り、朝礼でスピーチをする順番が回ってきて、私が皆の前に立って沈黙していると「耳も口もあるのに、どうして使わないの! 耳も聞こえなくてしゃべれない人もいるのよ!」と怒ったのです。衝撃を受けて涙が止まりませんでした。
その先生からは、友達に障害のある人がいる、と聞きました。話したいのに話せない人がいると知って、自分がどれだけ恵まれているか気付いたのです。
「人前で自分の意見を話すのが恥ずかしい」とか、「頭が真っ白になる」などと思っていましたが、よく考えると、「話せなくてもいいのではないか」と甘えていたと思います。
それを機に「変わらなきゃ」と決意し、苦手なことに次々挑戦しました。学級委員にも立候補して人前で話す機会に自分を追い込み、初めは泣きながらも、次第に話せるようになりました。
社会人になってからは、学生たちの前で話をしたり、時には厳しく導いたりしたこともありました。あの時の先生の言葉がなければ、今の自分はないと思います。