11月8日の中間選挙の結果がほぼ全て出そろい、一気に2024年の大統領選の話題が増えた。
トランプ前大統領は11月15日、フロリダ州の邸宅マール・ア・ラーゴで演説し、2024年の米大統領選に共和党から出馬することを表明した。だが、同氏の出馬表明に対する風当たりは強い。
保守系の調査会社ラスムッセンは11月16日、米有権者のうち32%がトランプ氏は出馬すべきだと考えており、60%がすべきでないと考えているという調査結果を発表した。
また、今年に入ってアンチトランプの編集方針を打ち出し始めた保守系日刊タブロイド紙「ニューヨーク・ポスト」は、トランプ氏の出馬表明について、一面の下部で名前や写真も入れずに「フロリダマンがアナウンスした」と冷たく紹介。IT面でのトラブルがあるなど、出馬表明の会場運営がひどく、主要議員が全く参加していなかったことや、長女のイバンカ氏が「もはや政治に関与するつもりはない」と宣言し、会場に姿も見せなかったことを大々的に報じるなど、トランプ氏批判を連発している。
主要な保守系メディアの多くは、出馬すれば次期大統領選の共和党予備選でトランプ氏のライバルになると見られるフロリダ州知事のデサンティス氏を応援し始めている。
実際のところ、トランプ氏は出馬キャンペーンを発表したものの、まだ選対本部の組織はなく、選対本部長もいない状況だ。
ただ、全国の共和党支持者の間では、2016年以来一貫して、トランプ氏は支持率で圧倒的な一位を誇る。トランプ氏出馬を支持する著名な共和党議員(リンゼー・グラム上院議員など)や保守系リーダーも存在しており、トランプ氏は、自身が立ち上げたSNS「Truth Social」にこうした人々のコメントの一覧を添付している。
また、トランプ氏が公式に出馬宣言をしたことにより、同氏に対するさまざまな訴訟は、手続きが煩雑になり、かなり滞る面もあると見られている。
下院がハンター・バイデン氏(およびバイデン・ファミリー)の調査を立ち上げ
共和党が下院の過半数を握ったことから、23年1月3日に始まる下院議会(第118会期)で、バイデン・ファミリーと外国政府・企業の癒着などへの調査が始まる見通しだ。調査の主たる目的は、バイデン大統領本人が息子であるハンター・バイデン氏のビジネスに直接関係していたことを白日の下に晒すことだ(ハンター・バイデン氏のビジネスについては、関連記事を参照)。
下院監視・改革委員会の共和党トップ、ジェームズ・カマー氏は、「これはジョー・バイデン(大統領)に対する調査だ」と強調している。一方で、バイデン氏は家族のビジネスへの関与を否定している。
だが、バイデン氏を追及した結果、弾劾などによって同氏が大統領を辞することになると、カマラ・ハリス副大統領が大統領に就任してしまう。それはアメリカにとってさらなる悲劇だが、米共和党下院トップのマッカーシー院内総務や保守系議員などは、それについては、ほとんど言及していない。
中立とは言えない特別検察官の任命で、トランプ氏の大統領再選を阻止か
米司法長官が、トランプ氏による機密文書持ち出しや米議会襲撃事件への関与疑惑を捜査し、刑事訴追するかを判断するために、ジャック・スミス氏を特別検察官に任命したことは、非常に大きな話題になった。本来、完全な政治的中立性が求められる役職だが、彼の過去の言動などから見て、明らかに中立性に欠けるため、トランプ氏は自身が立ち上げた「Truth Social」で、「彼は、政治的殺し屋だ。既に、極めて政治的武器化し腐敗した司法省で採用されることは許されてはならない」「とんでもない権力の乱用だ」などと怒りの声明を発信。トランプ支持者や多くの保守系識者も憤慨し、解任を求めている。
これは、23年1月から共和党優勢の下院議会が始まる前に、できるだけトランプ氏にダメージを与えて、トランプ氏の大統領再選を阻止する動きの一環だと言える。
同様に、現下院の特別調査委員会による21年1月6日議事堂襲撃事件に関わったとするトランプ氏断罪のための最後の追い込み(今期の議会が閉会する12月31日までの間)や、ジョージア州当局によるトランプ氏の選挙結果への介入の調査、ニューヨーク州検察当局による、一族が経営する「トランプ・オーガニゼーション」の不正税務処理疑惑への追及、既に終わったはずのトランプ氏不倫口止め疑惑への再調査など、あらゆる法的手段を駆使して、トランプ氏を追い込もうとする動きが加速している。
24年の大統領選においては、民主党には、大半の民主党員から出馬を望まれていない"老衰"状態のバイデン氏以外に、有力な候補者が見当たらないため、20年と同じく、「トランプ対アンチトランプ」の構図の中でトランプ氏の再選を阻止することが、民主党の主な活動の柱となる可能性が高い。
また、今回の中間選挙で、熱烈なトランプ支持者の候補は本選で当選しなかったケースが多い。民主党から見れば、トランプ氏が共和党の大統領候補になってもらった方が有利だという考え方もあるため、大統領再選を防ぎながらも、トランプ氏が共和党の大統領候補に選ばれるよう進めている動きもあり、複雑な様相を呈している。
(米ワシントン在住 N・S)
【関連書籍】
『ザ・リバティ』2023年1月号
幸福の科学出版
【関連記事】
2020年10月31日付本欄 バイデン候補の"腐敗"を撃つ──これが、ツイッター社が"検閲"したニューヨーク・ポスト砲の全文だ!
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2022年11月7日付本欄 間近に迫った米中間選挙の投開票 投票制度への強い不信も【─The Liberty─ワシントン・レポート】
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2022年10月3日付本欄 中絶問題と不法移民問題で揺らぐアメリカ【─The Liberty─ワシントン・レポート】