2020年10月に「地獄からのラップトップ」をスクープ報道していたニューヨーク・ポスト紙が、ハンター・バイデン疑惑をめぐる今後の見通しを報じている。司法省がトランプ側近を続々と訴追してきた前例にならえば、ハンター・バイデン氏の訴追は避けられないとの見解だ。以下の記事によると、容疑はハンター氏だけでなく、バイデン大統領にまで及ぶ可能性があるとのことだ。これまでハンター疑惑を否定してきた主要メディアは、すでにその事実を認める方針に転じている。前提となるのは、ハンター氏の刑事訴追が必至であるとの見通しだ。ハンター疑惑の行方が、バイデン政権を揺るがす問題に展開するのかは予断を許さない。
(幸福の科学国際政治局長 藤井幹久)
司法省がトランプ側近たちに適用した基準からすれば、ハンター・バイデンは訴追されるべきだ(ニューヨーク・ポスト紙記事)
(デラウェア州の)デビッド・ワイス連邦検事により、大陪審での一連の証言が行われてきた。連邦当局は、ジョー・バイデン大統領の息子ハンターを起訴する可能性に備えている。このことはメディアの方向転換をもたらした。主要メディアは、2020年には葬ろうとしていた記事を、突然に事実であると認めることにした。
法律の専門家の多くは、税法違反での訴追は不自然であり、不当だと述べてきた。なぜなら調査が開始されて以降に、遅まきながらもハンター・バイデンは税金を納めていたからだ。しかし、税金の問題ではなく、国際的な取引をめぐっての法律違反とされる可能性がある。外国代理人登録法(FARA)違反となる容疑があるからだ。
今週、私は下院司法委員会で、外国代理人登録法の強化についての証言を行った。そして、同法によるハンター・バイデンの訴追がありうるかを尋ねられた。その答えは、明確にイエスだ。もしも、司法省がポール・マナフォートの事案に適用したのと同じ基準を、ハンター・バイデンにあてはめるならば、(ハンターの)訴追は可能性があるだけではなく、その見込みは高いだろう。
マナフォートが有罪ならハンターも同じだ
マナフォートとハンターの事案は、きわめて類似している。両者ともに、個人のレベルでは贅沢な出費をしていた。マナフォートは、1万5000ドルのダチョウのコートを所有していた。ハンターには高価な売春婦たちがいて、14万3000ドルのフィスカー社のスポーツカーを所有していた。ふたりとも金遣いは荒く、負債はかさんでいた。
そうした費用がどのように払われていたかも類似していた。マナフォートは、2008年から2014年にかけてウクライナ政府やウクライナの政党のために行っていたロビー活動についての容疑で起訴された。そうした業務は、外国代理人登録法で規定されていた。しかし、マナフォートは(同法での)登録をしていなかった。
外国代理人登録法は犯罪捜査や訴追のためには、あまり使われていなかった。しかし、ロバート・モラー特別検察官は、この法律をもとにして訴追をしてきた。そうした容疑をもとに、トランプ側近のマナフォート、マイケル・フリン、ジョージ・パパドポロス、リック・ゲーツを標的にした。さらに最近でも、司法省は外国代理人登録法を使うことで、元トランプ顧問弁護士のルディ・ジュリアーニや、共和党陣営の顧問弁護士ビクトリア・トエンシングたちの自宅やファイルを捜索してきた。
法律専門家やメディアの人々は、こうした最近の外国代理人登録法の適用について称賛していた。しかし現在、外国代理人登録法の対象となっているのはハンター・バイデンだ。そして、様々な点からみて、その証拠はマナフォートのときよりも不利な内容となっている。
ハンターへの中国企業からの高額報酬
ハンターのラップトップのなかには、「外国当事者」との仕事について記された多数のEメールがあった。(そうした相手は)外国政府や外国機関だけではなく、外国に本拠がある会社、非営利団体、個人のほか、外国に居住するアメリカ人もいた。そして、中国政府との関係が深いCEFC(中国華信能源)社のような企業もあった。
たいした仕事をハンターがしていたようには見えない。報酬は高額だったが、そうした外国企業のために型通りの法律業務を行っていたとされるくらいだ。CEFC社のパトリック・ホーの「代理人」として100万ドルもの大金を稼ぐために、ハンターが何かをしていたという記録はない。その後にホーは有罪となって、三年間の刑を宣告されている。
ただし(Eメールの)記録によると、ハンターは外国の顧客のために、アドバイスや面会の設定を行っていた。そうしたことのなかには、父親との面会もあった。そして、マナフォートと同じように、ウクライナの政府関係者や企業との取引もあった。
違法性を認識していた証拠メール
ハンター・バイデンと叔父ジェームズが、地位を利用した取引をしていたのは明らかだった。そうした仕事は、ワシントンでは事実上の"家内工業"だ。もっともEメールのなかで、不正を隠そうとは少しはしていた。ハンターはそうした取引を、eBay(イーベイ)のように誰にでも売り込んでいた。
2017年5月1日付(の記録)では、CEFC社との仕事が外国代理人登録法に抵触する恐れがあることを、ハンター・バイデンは認識していた。そうした危険を、叔父ジェームズも感じていることを理解していた。「連邦や州が資金提供するプロジェクトに参加するためには、ある程度のレベルの米国企業である必要があるだろう。また、FCPA(海外腐敗行為防止法)の外国代理人には登録したいとは思わない。そうした問題についてはジェームズが詳しいので、外国企業のことについては彼に聞いてみたい」
このEメールは、検察官には願ってもないものだ。陪審員からみても、外国代理人登録法に違反していることは税法違反と同様に決まりきったことだと理解されるだろう。そして、本件のもとでは、ハンターだけではなく、ビジネスパートナーや家族も被告となる可能性がある。司法省がマナフォートらに適用したのと同じ基準を用いるならば、ハンターは起訴されることになるはずだ。
ハンター・バイデンは訴追されるのか
問題は、同じ基準が適用されるのかどうかだ。私は長らく、外国代理人登録法の規定が広範にわたることを批判してきた。近年の司法省は、中国やウクライナなどの外国のための広報活動やロビー活動をめぐり、様々な人物を有罪としてきた。ところが、司法省は犯罪訴追について従来の運用を変更している。そうした突然の運用の変更は、特別扱いがあるとの疑いを招くことになる。メリック・ガーランド司法長官が、このスキャンダルでの特別検察官の任命を拒んでいることについても、疑念を深めることになるだろう。
ワシントン・ポスト紙は、マナフォートほかの外国代理人登録法の事案を、民主主義を守るためには重要なことだと歓迎していた。「外国代理人登録法は、こうした外国の手先を捜査するための強力なツールだ。外国代理人登録法を活用するべきだ。その対象が誰であってもだ」と、コラムニストは結論づけていた。現在、その対象となっているのは、バイデン大統領の息子だ。問題となるのは、外国代理人登録法による訴追について、司法省やメディアがまだ同じような意欲を持ち合わせているのかどうかだ。
(ジョナサン・ターリー[ジョージワシントン大学ロースクール教授、弁護士]による寄稿/ニューヨーク・ポスト紙4月8日に掲載)
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