2022年2月号記事
Divine Economics
サプライサイド経済学の父 ラッファー博士
ケインズ政策で
景気を後退させたオバマ政権(前編)
Part 19
世界金融危機後、世界は大不況に陥った。ラッファー博士に、ブッシュ政権の終わりからオバマ時代にかけてアメリカが陥った不況とその原因について語ってもらった。
(聞き手 長華子)
アーサー・B.ラッファー
1940年生まれ。イエール大学を卒業後、スタンフォード大学で博士号を取得。経済調査とコンサルティングのラッファー・アソシエーション会長。サプライサイド経済学の父。レーガノミクス、トランポノミクスを導いた。大統領選挙中よりトランプ氏の経済政策顧問を務める。著書に『増税が国を滅ぼす』(日経BP社)、『トランポノミクス』(幸福の科学出版)などがある。
──ジョージ・W・ブッシュ政権末期からオバマ政権時代の移行期は、世界金融危機があり、その後、アメリカ経済は低成長に陥りました。博士は、当時をどう見ておられますか。
ラッファー博士(以下、ラ): 当時の状況について、まず説明しましょう。2001年9月11日の世界同時多発テロが起きた時のごく短い期間を除いて、ブッシュ大統領は人気のある大統領ではありませんでした。それは父のブッシュ大統領がイラクのクウェート侵攻をきっかけに湾岸戦争を始めた時に政権支持率が急上昇した以外は、低迷したのと酷似しています。息子のブッシュ氏もイラク戦争後、支持率は急速に低下していきました。
任期が終盤に近づいた07年末から08年にかけて、民主党は次期大統領候補を誰にするかを検討し始めました。そして選ばれたのが最も急進左派のバラク・オバマ氏だったのです。オバマ氏の人気が上昇し次期大統領になる可能性が高まるにつれ、市場関係者は恐れを抱きました。
そうした中で、08年に株式市場は大暴落。次期大統領がビジネス寄りではない、または経済活動を重視しないことが予測できたので、オバマ大統領の誕生を懸念し市場関係者が一斉に反応したというのが私の見立てです。
株価が暴落した時点ではまだブッシュ氏が大統領でした。株価が暴落すると、企業の資本価値が急激に減少し、それによって国中のさまざまな企業や産業に財務的圧力がかかります。リーマン・ブラザーズの経営破綻をきっかけに08年9月に金融危機が起こると、パニックになったブッシュ氏や彼の側近はベアー・スターンズ(*1)に連銀を通して緊急融資を行いました。この政府介入は完全に間違いでした。
さらにこの後ブッシュ氏は景気刺激法案を成立させ、約1兆ドル(約112兆円)規模の景気刺激策を実施しました。
しかし、08年の大統領選では、オバマ候補が共和党のジョン・マケイン候補に大差をつけて勝利してしまいました。
(*1)アメリカ第5位の投資銀行。ローンの信用度が劣る低所得者層を対象とする住宅ローンであるサブプライムローンの焦げ付き問題が原因で経営が急速に悪化した。
オバマ大統領とバイデン副大統領時代の景気刺激策の大失敗
ばら撒く代わりに、減税をする方がよい理由
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