2022年1月号記事
Divine Economics
サプライサイド経済学の父 ラッファー博士
「巨額の政府支出」はなぜ問題か?(後編)
Part 18
コロナ禍で先進国の債務は膨張し、日本の国と地方を合わせた政府債務も1200兆円を超える。
サプライサイド経済学では、「抑制的な政府支出」を重視する。前編に引き続き、あるべき財政政策について聞いた。
(聞き手 長華子)
アーサー・B.ラッファー
1940年生まれ。イエール大学を卒業後、スタンフォード大学で博士号を取得。経済調査とコンサルティングのラッファー・アソシエーション会長。サプライサイド経済学の父。レーガノミクス、トランポノミクスを導いた。大統領選挙中よりトランプ氏の経済政策顧問を務める。著書に『増税が国を滅ぼす』(日経BP社)、『トランポノミクス』(幸福の科学出版)などがある。
──前編では、働くこととお金を受け取ることとの間には「断絶」がある、これは「楔(ウェッジ)」と呼ばれているとおっしゃっていました。この点について、詳しくお話しいただけますか。
ラッファー博士(以下、ラ): 会社が従業員一人を雇うコストと、その従業員が受け取る税引き後の手取り額との間には落差があり、楔が打ち込まれています。
「ラッファーの楔」とは
図を使って説明します。
需要曲線と供給曲線を描いてみましょう(下図参照)。縦軸は賃金を意味します。横軸は、日本やアメリカの全体の就業者数を意味します(*1)。
需要曲線は左上から右下に下がります。
生産のために人を雇う需要は、支払う実質賃金や生産コストが高くなると減少していきます。人を雇うのにお金がかかればかかるほど、会社は人を雇わなくなるのです。
これには従業員を雇用するための給与のほか、税金、社会保障費、年金、駐車場の設置費用や、政府規制に対応するためのありとあらゆるコストが含まれます。需要曲線は、企業が一人当たりの従業員を雇うためのコストの合計を前提としているのです。このコストが下がれば、もっと多くの人を雇いたくなります。
(*1)就業者数が増えるのと比例して、GDP(国内総生産)が増えるので、国の富が豊かになる(労働者数×生産性=GDP)。
(出典:ラッファー博士の論文「The Economic Burden Caused by Tax Code Complexity」より)
給与明細を眺めて支払う税金を見てみよう
ラッファー博士ならこう楔を取り除く
産業ごとに課税率を変える差別をしてはならない