2021年12月号記事
Divine Economics
サプライサイド経済学の父 ラッファー博士
「巨額の政府支出」はなぜ問題か? (前編)
Part 17
コロナ禍で先進国の債務は膨張し、日本の国と地方を合わせた政府債務も1200兆円を超える。
サプライサイド経済学では、「抑制的な政府支出」を重視する。あるべき財政政策について聞いた。
(聞き手 長華子)
アーサー・B.ラッファー
1940年生まれ。イエール大学を卒業後、スタンフォード大学で博士号を取得。経済調査とコンサルティングのラッファー・アソシエーション会長。サプライサイド経済学の父。レーガノミクス、トランポノミクスを導いた。大統領選挙中よりトランプ氏の経済政策顧問を務める。著書に『増税が国を滅ぼす』(日経BP社)、『トランポノミクス』(幸福の科学出版)などがある。
──クリントン政権時代、アメリカでは均衡予算を実現しました。これは1993年の増税によるものではなく、共和党がクリントン大統領と熾烈な予算交渉を行ったことにある、とも言われています。実際は何が起きたのか、当時のことを詳しく語っていただけますか?
ラッファー博士(以下、ラ): レーガン後を振り返りながら、お話ししましょう。
レーガン大統領が89年1月20日に退任後、大統領になることに決まっていたのは共和党のジョージ・H・W・ブッシュ氏です。彼はマサチューセッツ州の民主党知事マイケル・デュカキスを破り、大統領に当選。誰もがブッシュ氏の在任期間は、レーガンの三期目に近いものになるだろうと期待していました。しかし蓋を開けてみたらレーガンとは似ても似つかないものとなった。湾岸戦争を遂行し人気を上げたり、増税施策を行ったりするなど、その違いを際立たせました。
増税法案を通したあたりから、私は彼のやり方に異を唱えるようになりました。「再選の勝ち目はない」と予測したのを覚えています。増税後、案の定景気は悪くなり、支持率は大幅に低下して、92年にアーカンソー州知事のビル・クリントン氏に完敗したのです。
選挙戦でフラット・タックスが人気を博す
クリントン氏は成長志向型に転向
増税派が持ち出す論理