イスラエル大学が今般発表した年次レポートによれば、2010年に全世界で起きた反ユダヤ主義(anti-Semitism)事件の件数はピークの2009年より大幅に減ったものの、依然として高い水準に留まっているという。CNNサイトの「BeliefBlog」が伝えている。

レポートによれば、ユダヤ人に対する物理的暴力、脅迫、破壊活動などは2009年の1129件から2010年には614件に減り、46パーセント減少したが、依然として80年代に統計を取り始めてから3番目の多さである。事件が多く起きたのは英国、フランス、カナダで、この3ヵ国で全体の60%を占めている。ちなみに2009年の件数の多さは、年初のイスラエルによるガザ侵攻への反動によるものとされている。レポートはとりわけ、インターネット上にあらゆる形で投稿されている反ユダヤ主義的な書き込みに対して憂慮を示している。

このレポートを受ける形でイスラエルのネタニヤフ首相は、閣議の冒頭でこう述べた。

「今日、問われるべき問題は、我々はホロコースト(第二次大戦におけるユダヤ人の大量虐殺)の教訓に学んだのかということだ。大変遺憾なことに、答はノーである。新たな反ユダヤ主義が広まっている。多種多様な力が一緒になって世界を反ユダヤ主義で埋め尽くそうとしている。ユダヤ人に対する憎しみと存在否定が、ユダヤ人国家に対する憎しみと存在否定に姿を変えている」。

ネタニヤフ首相が「多種多様な力」と呼んでいるものの中心は、言うまでもなくイスラム教勢力だろう。首相の言葉に代表される「自分たちは世界から迫害されている」というイスラエルの被害者意識を和らげるためには、第三者として仲介できる立場にある日本からも、丁寧な働きかけが必要ではないか。(司)

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