メディアの形は進化し続け、情報の量は増え続けている。便利な反面、その情報をどう消化すればいいのか。広告などで、人の心をつかむ企画を生むプロフェッショナルに話を聞いた(2016年2月号記事より再掲。内容や肩書きなどは当時のもの)。
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川上 徹也
広告をつくる時は、企業から「こういう主旨の広告をつくってください」と説明を受け、帰りの電車に乗っている頃には、「こんな方向のキャッチコピーでいこう」「こんなデザインにしよう」という大筋が見えていることが多いです。
そんな様子を見て、人から「燃費がいいですね」と言われることがあります。さも、生まれつきの才能があるような言い方ですが、そんなことはありません。
普段から水面下で、情報の仕入れに労力をかけています。
ビジネスホテルを制覇する理由
講演などで地方に行く時も、駅から会場までの送迎は断って、公共交通機関を使って移動します。すると様々なものが見えてきます。
例えば先日、青森でバスに乗ると、お年寄りばかりを見かけました。広告を見上げると、北海道の大学のものばかり。そこで、「青森の若者は地元を離れて、北海道に行きたがるんだな」という発見が得られます。
ホテルも、毎回違う場所に泊まるようにしています。先々で、「客はここでどんな不満を持つだろうか」など、観察をします。青森のビジネスホテルは、大概、制覇してしまいました(笑)。
何をしているのかというと、世の中の人の悩みや意志といった本音を集めているのです。この本音を、広告業では「インサイト」と呼びます。企画やコピーの材料です。
本は1日1冊以上
メディアからも本音を集めています。一般紙や日経MJや、女性誌も意識して目を通します。
またほぼ毎日、どこかの書店に行き、売れ筋やそのタイトルをチェックしています。書店には人の悩みや欲望、そしてその解決策が集まっているので、「人類最高峰の悩み相談室」と呼んでいます。
こうして情報からあらゆる層の「本音」を読み取り、様々な年齢や性別の立場に立てる自分になろうとしているのです。
本からもアイデアのヒントを得ています。お風呂に入りながらなどですが、1日1冊読まない日はありません。
ただ、本当に大事なことは頭に残っていると思うので、全部覚えようとは思っていません。どの情報収集も、好奇心をアンテナにして、「呼吸のように」しています。
そして様々な情報から刺激を受ける中で、本のタイトルや企画が浮かぶので、ノートに書き残します。私のノートには、死ぬまでに実現しきれないほどの企画や本のタイトルが書かれています。
こうした洞察やアイデアの蓄積で、コピーライターとしての仕事に差がついているのだと思います。(談)
【関連書籍】
『富の創造法』
幸福の科学出版 大川隆法著
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