2011年6月号記事
改正臓器移植法に基づいて脳死と判定された10代前半の少年を提供者とする臓器移植手術が4月13、14日、行われた。15歳未満で脳死判定を受けた例は今回が初めてで、心臓、両肺、肝臓など、提供された臓器は計5人の患者にそれぞれ移植された。「臓器移植の新しい扉が開かれた」など、ほとんどのメディアは今回の件を美談として大々的に報じた。難病や重病を抱え、臓器提供の機会を待っている人やその家族にとって、臓器移植はまさに一縷(いちる)の望みだろう。また、他の患者の救いになればと、臓器提供に承諾した家族の心情は重く受け止めるべきではある。
しかし、97年に臓器移植法が成立した当初から本誌で繰り返し訴えているとおり、脳死は人の死ではない。脳死移植は推進すべきではなく、再生医療の進歩などによって難病や重病の克服を目指すべきだ。